「旅する中国語教室」の講師が、教室への思いや指導方針について語りました。35年70回超・約300ヶ所という旅の経験が、なぜ「教える」という形に結びついたのか。現場で培った視点とこの教室ならではの考え方を一問一答(インタビュー)形式でまとめました。

【講師として】
・中国語指導歴7年超
・旅の中国語に特化

【旅人として】
・中国渡航歴 35年・72回・300ヶ所
・1997年から情報発信

中国語とはどのような出会いでしたか?

地球の歩き方の1,000円で中国を1日旅行できるキーワードに触れて、バックパッカー旅に目覚めました。

最初に中国へ行ったのは1991年。中国語を少しは学んではいましたが、鑑真号で上海へ着いて、上海から北京へ向かう寝台列車で、大学生と直接対面で会話して、すいかをおすそ分けいただいたのですが、言葉が出て来なくて、筆談に頼りっきりでした。

こういったことがきっかけに「うまく話せなかったから、次行く時までに中国語を上達したい。」、「もっと話ができるように中国語を覚えたい。」という気持ちが高まりました。この思いが中国語学習のモチベーション維持にも繋がりました。

夜21時の中国街角 福建省三明市沙県区 老沙県米凍皮の店舗外観 Photo by 旅人@中国旅行一筋30年 | 2026

▲ 夜21時過ぎ、灯りに誘われ入店

① 夜遅くの町歩きー街角で見つけた飲食店の明かり

宿に荷物を置き夕食を求めて夜の街へ。時刻は21時過ぎ。中国の街は夜遅くまで賑やかですが、地方都市なので、さすがに人通りも少なくなり、閉まり始める店もポツポツと出てきます。そんな中、たまたま見つけたのがこの小さな食堂でした。

旅の中国語 沙县 (shāxiàn) 小吃で有名。中国人は皆知っている。
💡 旅プロのTips

個人経営の店は21時を過ぎると店じまいを始めることも増えてきます。この時間帯、電飾看板がしっかり点灯している店は、快く迎え入れてくれる可能性が高い「安心の目印」です。

旅人視点のチェック
「老沙県」の文字。沙県小吃の中でも伝統的なブランドであることが伺えます。安堵感とともに店内へ。

当時の中国はどんな雰囲気でしたか?

90年代は「メイヨー」、「メイヨウ」、中国語表記で「没有」。旅先で至る所でこの言葉を聞きました。

物質的にまだ満たされていませんが、羽ばたこうとしている前の中国のおおらかを感じることができました。当時を思い出すと、メイヨーを聞くことが逆に中国へ行った感があって、楽しいくらいだったのかもしれません。

旅先で出会う中国人ですが、フランクに会話に応じてくれます。親切な方が多数いましたし、食堂やショップでは商売なので、つたない中国語でも一所懸命聞いてくれます。これは当時も今も変わりません。

中国語を教えようと思ったきっかけは?

「旅先で中国語が使えると、旅はぐっと楽しくなる。」そのことをずいぶん前から実感していました。それを人に伝えたいと思って教え始めたのが、今から7年あまり前のことです。きっかけというほど劇的な出来事があったわけではなく、自然とそうなっていった、という感じです。

授業で一番大切にしていることは?

言葉は旅を助ける道具のひとつ。道具を使いこなすには、旅そのものを知ることが先です。

「旅と言葉は切り離せない」ということです。中国語ができても、旅の現場では言葉だけで解決できないことが山ほどあります。逆に、旅の知識や状況を読む力があれば、言葉が少なくても切り抜けられる場面はたくさんある。言葉はあくまで旅の道具のひとつです。だから、授業では中国語の表現だけでなく、旅で実際に何が起きているかという話も一緒にします。

② 限られた場所を最大限に活かす清潔で機能的な店内

老沙県米凍皮の店内風景 福建省三明市沙県区 Photo by 旅人@中国旅行一筋30年 | 2026

▲ 清潔感のある調理場と客席

店に入り目に飛び込んできたのは、白タイルの清潔感でした。小規模な食堂ですが、調理台がスッキリしており、手入れが行き届いていることがわかります。客席は最小限ですが、無駄のない配置で、一人でも気兼ねなく食事ができる落ち着いた空間です。

💡 旅プロのTips

店内の「清潔感」を確認するのは鉄則ですが、もう一つの重要チェックポイントが「コンセントの有無」です。壁際や足元にコンセントがある席を見つけられれば、食事中にスマホの充電ができるため、旅の安心感が格段に増します。

旅人視点のチェック
店舗の規模こそ小さいものの、テーブルや周りの清掃が徹底されており、非常に清潔感があります。こうした「基本が守られている店」は、初めての訪問でも安心して箸をつけることができます。

なぜ、発音をそこまで重視するのか?

初めての方や初級者の方を指導してきた経験から言いますと、発音を最初から難なくこなせる方はほとんどいません。初級の段階では自分の発音のどこが違うのかを自覚するのが難しい。だからこそ、気づきを与えることを大切にしています。

特に2声と3声は多くの方がつまずくポイントで、継続して取り組むことでだんだんこなれてきます。

正確さを意識するあまりゆっくりになると、かえって相手が聞き取りづらくなります。ある程度のテンポと流れのある発音が、実際に通じるための条件です。

母音の発音も重点的に扱っています。日本語にない音が含まれるため、旅行会話に入ってからも継続的に触れるようにしています。

授業はどんな流れで進みますか?

授業の前半を復習に、後半を新しい内容に充てる形でずっとやってきました。仮に前回休んでしまった場合でも次の授業で追いつけるようにするためです。発音練習や会話練習の時間もきちんと確保しています。

それに加えて、最近の渡航で体験してきたエピソードや、その時ならではの現地の話を授業に織り込むようにしています。旅に行くとこんな楽しいことがあることを伝えることが、学び続けるためのモチベーション維持につながり、受講者から受け入れられています。

旅の経験がそのまま教材になる

教科書には載っていない中国が授業の中にあります。

授業のスキットを作る時、「実際にこういう場面がある」ということを前提に場面設定をしています。食事・移動・宿泊ひとつとっても、現地での体験から使えるエピソードがありすぎて選ぶのに困るほどです。

たとえば、飲食店のメニュー。地元の食堂では壁にドーンと大きな表示があるだけのことが多く、古い食堂ならくたびれたラミネートの紙1枚だけということもある。そもそもメニューがない店もあります。繁盛店で「あるものを出す」スタイルだったり、その日の食材で作れるものを口頭で教えてくれるだけだったり。

③ 看板の数字よりも「自分の直感」
  -安くて美味しい”ひと皿”を見定める醍醐味

老沙県米凍皮のメニュー看板 招牌メニュー 福建省三明市沙県区 Photo by 旅人@中国旅行一筋30年 | 2026

▲ 「招牌」の文字が並ぶメニュー看板

壁一面に並んだメニューを見て正直迷いました。NO.1などの評価をそのまま受け入れるのではなく、品名と価格をじっくり見比べます。肉料理も惹かれるなど、魅力的な選択肢が多く困るくらい。
その中で、5元前後の手頃な価格帯の中にこそ、この店の実力が隠れているのではないか。店主に売れ筋を聞きながら、自分の直感と好みで納得の「3品」を選び出しました。

旅の中国語 招牌 (zhāopai) 看板料理を指します
💡 旅プロのTips:中国語で選ぶ「招牌」

メニューにある「招牌(zhāopai)」は、店が最も自信を持っている料理を指します。迷ったときはこれを選ぶのが無難ですが、安くて美味しいものを探す旅なら、あえて「招牌」という言葉をフックに店主と対話し、その日のコンディションや自分の予算に合った「自分にとっての招牌」を見定めるのが楽しみを広げるコツです。

旅人視点のチェック
「食べたいものがいっぱいある」と感じさせる店は、それだけで名店です。限られた胃袋のキャパシティの中で、肉料理を諦めてでも選んだ5元のメニュー。その決断の結果は、次の料理写真で。

「メニュー」というひと言をとっても、これだけ多様なのです。自分が実際に旅してきたトラブルも含め、現場での経験がそのまま授業を作り上げる基礎になっています。

私自身、福建省の泉州でYoutubeでカステラづくりを自分で覚えた若者と交流したり、陝西省でマッサージ屋さんから聞いた話を聞いて無料マッサージが受けられる町に行けたりするなど、中国語が話せることで、バックパッカー旅行で貴重な体験をしてきた経験が、授業の成り立ちとも関係しています。

他の中国語教室と何が違うのか?

語りきれないほどありますが、まず講師が違います。35年間で300ヶ所を旅した現役の旅人が教えている中国語教室は他に類をみないのではないでしょうか。

教えている内容も、旅の現場で自分が実際に使っている表現です。主語をつけなくていい場面、ひと言で足りる場面——シチュエーションを読めば、言わなくていい言葉はたくさんある。

「通じればいい」を出発点にしているので、教科書的な中国語とは自ずと違ってきます。

市販の教科書は使わず、授業ごとにスキットを作り、解説を考えて臨んでいます。その積み重ねが、旅で使えるオリジナル教材になっていきます。

どんな受講者とともに学びたいですか?

仕事を持ちながら、生活の中で時間を工夫して学びに来る方。課題を締め切りより前に提出してくれる方、連絡に誠実に対応してくださる方。

そういった方のやり取りを見ていると、真剣さが伝わってきます。それに応えなければという気持ちが、自分の授業への姿勢を引き締めます。楽しければそれでいい、という教室ではありません。真剣に取り組む方に、真剣に応える教室です。

④ 直感で選んだ3品―14元の納得感がもたらす満足感

沙県小吃の実食メニュー 拌面 扁肉 花生醤拌面 Photo by 旅人@中国旅行一筋30年 | 2026

▲ 合計14元。納得の3品が並ぶ

「拌面(素の混ぜ麺)」、ワンタンに似た「扁肉」、そして「花生醤拌面(ピーナッツ味の混ぜ麺)」。合わせて14元という安さですが、いずれも実にしっかりとした食べ応えで私の直感に狂いはありませんでした。気取らない現地の味が空腹を満たしてくれます。これだけ満足度の高い店なら、次の日もまた寄りたいと思いましたが、移動の予定があるため泣く泣く店を後にすることに。中国の地方都市の夜に見つけた、一期一会の夕食となりました。

💡 旅プロのTips

沙県小吃で「拌面」と「扁肉」は定番。そこにピーナッツ味のまぜ麺を加えることで、この店ならではの味のバリエーションを安価に楽しむことができました。豪華な一皿を頼むよりも、こうした組み合わせで自分の「正解」を作るのが旅の食の面白さです。

旅人視点のチェック
「また来たい」と思わせる店に出会えたなら、その街の滞在は成功と言えるでしょう。移動の直前、最後の一口を惜しみながら味わう時間は、旅の記憶に深く刻まれます。

受講者のみなさんへ

完璧に話せなくていい。ひと言通じた体験が、次の旅への原動力になります。

旅の楽しみ方は人それぞれです。皆さん自身の旅のあり方を自ら探っていってほしいと思っています。

食事・移動・宿泊——旅先で中国語を使う場面はたくさんあります。完璧に通じなくてもいい。話した言葉がある程度通じた、聞き取れた、その体験が次への意欲につながります。

私自身も最初の中国旅行では中国語がほとんど話せず、悔しい思いをしました。「次に行く時はもっと上手になろう」という思いから、学習を続けてきたことが、今につながっています。皆さんにも、そういった足跡をたどっていただけたら嬉しいです。

この教室への思い

旅先で「通じた」「聞き取れた」を体感して帰ってきた方が、またもっと学びたいと思ってくれる。そういった声を聞けることが何より楽しみです。より多くの人にその体験をしてもらいたい——そのために、この教室を立ち上げることにしました。

皆さんへのメッセージ

中国旅行が初めての方にとって、ひと言、ふた言、フレーズや単語を話すだけでも、現地の中国人に近づくことができます。

生の声を聴いたり話して現地の人との交流をすることは、旅の印象をより深いものになること間違いありません。私自身が長年にわたり数えきれないくらい経験しており、自信をもって言えることです。

旅行先では、旅の恥はかき捨て的に自分が学んできた中国語の勉強成果を試すことができる場所と考えるとより前向きになれるのではないでしょうか。チャレンジする価値があります。

旅先で「通じた」を体験してみませんか。
まずは無料のレベルチェック&学習相談から、あなたの現在地を確認しましょう。

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