アリペイを使っていた日になぜWechatPayを出したのか——216回連続キャッシュレス検証で見えた「死角」の正体
旅先での支払いを「今日はアリペイの日」「明日はWechatPayの日」と決めて、交互に使い分けながら旅をしたことがあるだろうか。
2025年12月末から2026年1月にかけて、重慶から湖南省・安徽省へと続く内陸部の旅で、私は実際にそれをやり続けました。
目的はただひとつ——「アリペイとWechatPay、中国旅行では本当にどちらが使えるのか」を身をもって確かめるためです。
旅を通じて216回連続のキャッシュレス決済を達成しました。しかし、そういった記録よりも大事な「発見」がありました。アリペイを使うと決めていた日に、やむなくWechatPayを出さざるを得ない場面が何度かあったことです。
なぜ毎日「交互に」使ったのか
ひとつのアプリだけを使い続けていると、もう一方のアプリではどうなのかが分かりません。旅の専門家としては、「アリペイが使えた」という事実だけでは、「そこでWechatPayは使えたのか」まで検証できない懸念があったからです。
だから私はあえて毎日ルールを変えました。「今日はアリペイだけを使う」「明日はWechatPayだけを使う」——それを意識的に繰り返すことで、両アプリの「使える場所」と「使えない場所」のズレを浮かびあがらせようとしました。
エリアは重慶を起点に、湖南省、福建省、江西省、安徽省と移動しながら、鉄道・路線バス・長距離バス・飲食店・観光地など、あらゆる場面で実地テストを行いました。
結果として達成した216回連続のキャッシュレスは、「どちらかを使えた」のではなく「両方を準備していたから達成できた」数字と言えます。

銀聯カードも同時に検証テストしているため、本来、ほとんど全ての店舗などでアリペイが使えると考えていただいて差しさわりありません。
検証結果① ほとんどは「どちらでもOK」
まず大前提として強調しておきたいことがあります。検証して分かった最初の事実は、「大半の場所ではアリペイもWeChat Payも問題なくどちらでも使える」ということです。
鉄道駅の切符売り場、ローカルな食堂、路線バス、観光地の入場料——いずれも「アリペイでいい?WechatPayでいい?」と聞くと、ほとんどの場面で「支付宝,微信都可以(どっちでもOK)」という返事が返ってきました。
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コロナ後に4回中国へ渡航していますが、中国の決済インフラは、既にアリペイとWechatPayの「両対応」が基本となっています。
2026年時点で旅した内陸部の地方都市でも同様だでした。大都市に限った話ではなく、地方都市も田舎も含めて、路線バスから観光地まで、基本的な生活インフラでの決済はどちらでも問題なくできたと言えます。
検証結果② アリペイに「死角」が存在した
しかしアリペイを使うと決めていた日に、やむなくWeChat Payを出した場面が実際にあった。「アリペイの日にWeChat Payを使った=その場所でアリペイが通じなかった」ことを意味します。
ケース① 長距離バスターミナル窓口
湖南省の保靖(バオジン)という地方都市の長距離バスターミナル窓口で、窓口にはWechatPayのQRコードしか掲示されていいませんでした。

保靖の長距離バスターミナルアリペイを差し出すと、担当者がわざわざ別のQRコードを出し直す手間が発生しました。小さなことのようですが、後ろに列が並んでいる状況では担当者の機嫌を少し損ねることにもなります。
ターミナル全体でアリペイが使えないわけではなかった。ただ、窓口ごとに掲示されているQRコードが異なる場合があり、「WehatPayのみ表示」という状況が地方では珍しくない。「QRコードが出ていた方のアプリで払う」という柔軟な対応が求められる。
ケース② 路線バスの乗車コード(乘车码)
安徽省合肥や廬江を走る路線バスでの話です。Wechatのミニプログラム(小程序)を使った乗車コードは問題なくスキャンされ、そのまま乗ることができました。
ところが、アリペイの交通乗車コードを使おうとすると、「中国の身分証番号(居民身份証)」の入力を求められた。外国人はこの番号を持っていないため、アリペイの乗車コードは実質的に使えない状態でした。
これは単なる「その路線がWechatPay」という話ではなく、制度的な問題なのです。中国の公共交通機関のデジタル乗車は、外国人対応が追いついていないケースが地方では依然として多く存在しています。
アリペイの乗車コードが使えない路線では、WechatPayかバスカードが事実上の唯一の選択肢になります。
「両刀使い」が唯一の正解
旅行のプロとしてこの検証から得た結論はシンプルです。「アリペイかWechat Payどちらが良いか?」という問いの立て方自体が認識違いの話でして、正しい問いは「両方を準備しているか」どうかなのです。
大半の場所ではどちらでも使えます。だからこそ、いざ「死角」に出くわしたときにバックアップがなければ、水一本を買うことも、バスに乗ることもできなくなる。その瞬間はいつ来るか分からない——バスターミナル窓口、外国人対応が未整備の路線バス、こうした場所でこそ決済手段の分散が命綱になります。都市の規模に関わらず起きうることです。
メインはどちらでも構いません。自分が使い慣れた方を主軸にすれば問題ありません。ただし、もう一方を「使える状態で」必ずスマホの中に入れておくこと。これが現代の中国旅行の基本と知っていただければと思います。
出発前に必ずやっておくべき4ステップ
現地に到着してから設定しようとするとエラーが発生して動けなくなるリスクがあります。日本を出発する前に以下の4つを完了させることをお勧めします。
STEP 1 アリペイ・WechatPay、両方をインストールする
どちらか一方だけでは不安。両方を必ずスマホに入れておきます。
STEP 2 クレジットカードを両アプリに登録する
VISA・MasterCard・JCBカードが利用可能です。複数枚登録できる場合はしておいた方がよいです。出発前にアリペイやWechatPayのクレジットカード登録(紐付け)を完了させることが絶対条件で、現地での設定は接続できないなど、トラブルの元になります。
但し、セキュリティを気にされる方は、登録されるカードを絞り込むという選択肢が可能です。
STEP 3 実名認証(本人確認)を済ませる
認証なしではQRコード決済の利用に制限がかかる場合があるため、出発前に完了させておくことをお勧めします。
といいますので、現地に着いてから、実名認証を求められる可能性があるからです。どうせしないといけないのであれば、先に済ませておくということです。
STEP 4 代替の決済手段を考えておく
バッテリーの電池切れやスマホ本体の故障、アプリの動作異常など、万が一、アプリが使えない場合のバックアップの決済手段として、銀聯カードや現金を想定しておくと安心です。アプリだけに頼り切らない備えが特に長旅では重要になります。
各アプリの最新の登録方法については次の関連記事で詳しく解説しています。
まとめ
今回の検証を通じて確認できたことを整理します。大半(9割超)の場所ではアリペイもWechatPayも問題なく使えます。
しかし、アリペイにはバスターミナル窓口や路線バスの乗車コードに「死角」が存在します。外国人ではアリペイの乗車コードが使えない路線があります。
「どちらを使うか」より「両方を準備しているか」が問われる時代になっているのではないでしょうか。
中国旅行は現金なしで完結できるほどキャッシュレスが進んでいます。だからこそ、たった一回の「使えない」場面で行動不能になるリスクを事前に潰しておくことが、快適な旅の前提条件です。
筆者情報

- ブログサイト「中国旅行ドットコム」運営者
- 1991年から30年以上・72回・約300ヶ所を個人旅行で歩いてきたベテラン旅行ブロガー。ツアーでは入れない路地裏や地方の町まで足を運び、リアルな中国渡航情報を発信しています。中国語講師としても活動中。詳細は筆者紹介をご参照ください。問合せはこちらまで。