バックパッカーの魅力と実践 ~中国100元格安旅行30年~

「地球の歩き方・中国」の表紙に書かれていた「1,000円で1日過ごす」という言葉が私の心を捉えたのは、今から30年前のことでした。

インターネットがまだない時代、「バックパッカー」という言葉に漠然とした憧れを抱き、リュックひとつで中国へと向かったのが私の旅の始まりです。

以来30年間、路地裏の散策、ローカル食堂での食事、現地の人々との何気ない中国語での会話を通じて、観光客では決して体験できない本物の中国を歩き続けてきました。

この記事では、長年のバックパッカー経験から得た知識と、今でも1日100元(約2,000円)で楽しめる中国旅行の秘けつをお伝えします。

バックパッカー旅のスタイル

中国旅行を始めた1990年前半の頃から心がけていた旅のモットーは次のとおり一貫していました。

  • リュックサックで身軽に移動する。
  • 宿泊費や交通費をなるべく安く抑える。
  • 路地裏や市場など町を散策する
  • 旅行者が入らないローカル食堂で食事をする
  • 現地の方々と他愛のない会話を楽しむ

このシンプルな旅の姿勢が、30年間変わらず続く私の旅のスタイルとなっています。

バックパッカーとは何か?

Wikipediaによると、バックパッカー(backpacker)とは「低予算で旅行する旅行者で、バックパック(リュックサック)を背負って旅をすることからその名が付いた」とされています。

ちなみに中国語でバックパッカって何と言う?

中国語では「背包族」bèibāozú(ベェイバァオズー)、「背包客」bèibāokè(ベェイバァオクゥー)と呼ばれ、特に後者はその発音が英語の「backpacker」に似ているのが特徴です。

「族」はひとつのカテゴリーに当てはまる人たちを指すのですが、「背包」、これが背中に背負うリュックで、漢字を見るだけで、バックパック旅行をイメージできます。「包」はかばんやバックの総称です。

バックパッカーの特徴

ックパッカーの主な特徴は次のとおりです。

  1. 移動手段は主に公共交通機関を利用
  2. 宿泊施設はユースホステルや安宿を選択
  3. 有名観光地だけでなく、現地の人々との交流を重視
  4. 自分のペースで旅程を調整する柔軟性を持つ

以前のバックパッカー宿

当時の話ですが、北京では、東城区東四周辺が安宿街として知られており、多くのバックパッバカーが集まる場所と言われていました。

他にも、上海には浦江飯店とか、成都は交通賓館といったバックパッカーが泊まる常宿がありました。

旅バックの選び方 ~30年の試行錯誤を経て~

長年の旅で、私はさまざまなリュックやバックを試してきました。キャスター付きバッグを使用していた時期もありましたが、中国の道路環境では全く実用的ではありませんでした。

キャスター付きバックが向かない理由

  • 中国は平坦な場所が少なく、でこぼこが多いため、キャスターの利点が活かせない
  • 片手がふさがることで行動が制限されるのは痛手
  • 道路が清潔でないことが多く、雨天時にはバッグの底面などが汚れやすい
  • 両手が自由なリュックスタイルの方が圧倒的に機動性が高い

バックパックを愛用する背景

現在は、次の点を考慮して選んだバックパックを使用しています。

  • 背負いやすさを重視したデザイン
  • 防水性能が高く、軽量で薄い素材
  • 複数の収納スペースに分けられる
  • 日常の町歩き用に折りたたみ式の小型リュックも併用
現在愛用中のバックパック(リュック)
愛用している現役のバックパック

バックパッカー文化の影響

今でも印象に残っているメディアを通じたバックパッカーの生態を示すような番組がいくつかありました。

バックパッカーの旅のスタイルは、いくつかの有名な番組や書籍で描かれてきました。

紹介する作品は、バックパッカーという旅のスタイルの魅力を多くの人々に伝え、影響を与えてきました。

当時は誰もが知る ~電波少年~

日本テレビ系で放送された「進め!電波少年」では、当時は泣かず飛ばずであった猿岩石(有吉弘行と森脇和成)が何も知らずにアイマスクを付けられて香港まで連れられて、初めて番組企画を告げられました。

リュックを背負い、途中の町で芸をしたり、食堂や農園などで働きながら旅資金を稼ぎ、香港からロンドンまで旅する姿が描かれました。その道のりは果てしなく長いものでした。

メディアから知った旅のロマン ~深夜特急~

沢木耕太郎の「深夜特急」をご存じでしょうか。名古屋のテレビ局が1996年から1998年に3回に分けて放映されました。

当時無名だった大沢たかおさんが主演で本人役を演じました。長期ロケに耐えて、なかなか骨のあるロケでした。

香港の落馬洲の展望台から深圳を眺めている時に、香港人の若者が、大陸側に複雑な感情を持っていたことやマレーシアのマラッカでの夕陽が特に印象的な旅の瞬間でした。

実践!1日100元で楽しむ中国旅行

冒頭で述べた「1日100元(約2,000円)で中国滞在」は、かつての目標でしたが、物価上昇に伴い、特に移動の多い日は難しくなっています。しかし、同じ町を拠点に数日滞在するパターンであれば、今でも十分に実現可能です。

実際の予算配分例

100元をどのようにして使うと1日を過ごせますでしょうか?

  • 宿泊費 40元
  • 朝食 5元
  • 昼食 15元
  • 夕食 15元
  • 交通費 10元
  • その他 15元

北京東郊外通州の住宅街で私が見つけた40元の安宿は、「旅社」(lǚshè)と呼ばれる部屋だけの木賃宿で、同じ敷地内には公衆浴場もありました。

北京郊外通州住宅街の安宿の部屋①
北京郊外通州住宅街の安宿の部屋

2023年の1日100元滞在例

コロナ後の2023年9月、江西省の省都南昌でユースホステルに泊まりましたが35元程度で、上記予算で十分1日を過ごすことができました。100元はしなかったと思います。

バックパッカー初心者のために

バックパッカーとして旅を始めたい方のために、安全対策と必要な持ち物についても触れておきましょう。

タビサポ Powerd by 三井住友カード などのウェブサイトでも確認できますが、私の経験から特に重要なポイントを挙げます。

安全対策

  • パスポートのコピーを複数持つ
  • 貴重品は身につけるタイプのセキュリティポーチに保管
  • 現地の緊急連絡先を調べておく
  • 旅行保険に加入する

持ち物例

  • バックパック
  • 軽量で乾きやすい衣類
  • モバイルバッテリー
  • 決済アプリ

年齢に関係なく続く旅のスタイル

旅のスタイルは人それぞれで正解はありません。自分で旅をしながら磨き上げ、作り上げていくものです。

100元旅だけでなく、1万円を1日の旅の予算にすることも立派な旅のスタイルです。

しかし、私自身は、身体が動く限り、何歳になってもバックパッカーとしての旅をずっと続けたいと思います。

バックパッカーとして旅を続ける理由

なぜなら次の理由があるから、今後も続けていきます。

  1. 自由度が高く、予定外の発見や出会いを楽しめる
  2. 現地の生活に近い形で旅ができる
  3. 限られた予算で効率的に旅を楽しむ知恵が身につく
  4. 年齢を重ねても続けられる持続可能な旅のスタイル

まとめ ~バックパッカーは旅の哲学~

バックパッカーとして30年間中国を旅してきた経験から言えることは、これは単なる旅行のスタイルではなく、一つの生き方、旅の哲学だということです。

リュックひとつでシンプルに旅をする中で、本当の豊かさや人との繋がりの大切さを実感できるのです。

物価は上がり、スマートフォンで情報が得られるのが当たり前の中で、旅のスタイルも変わりつつあります。

バックパッカーの精神、好奇心を持ち、現地の人々と交流し、自分のペースで世界を探検する姿勢は変わりません。

あなたも一度バックパッカーとして旅に出てみませんか?きっと、新しい自分との出会いがあるはずです。


作者プロフィール

旅人@中国旅行一筋30年
旅人@中国旅行一筋30年ブログサイト「中国旅行ドットコム」運営者
1991年から30年間で70回以上の中国訪問歴を有するベテラン旅行ブロガー。

中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営。

新型コロナウイルス後の中国旅行に対応した最新情報から、大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。

【個人旅の実績】 訪問した省・市・自治区:32(残1) 訪問地:200以上
【印象に残る旅のエピソード】 数え切れず
【撮影した写真】 45,000点以上

安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。

1日100元以内での滞在に挑戦するなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、海外モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。

ブログをご覧になられた読者との交流も大切にしており、ほぼ毎日質問がきて、いただいた情報をブログや動画に反映している。メーリングリスト立ち上げなど、新しい取り組みも行っている。

詳細は作者紹介をご参照ください。問合せはこちらまで。

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