紙の地図からスマホアプリへ ~旅経験者が語る中国地図事情~

中国旅行で地図は必須アイテムですが、この10年で劇的な変化がありました。かつて駅前で売られていた紙の折りたたみ地図が姿を消し、代わりにスマホアプリやWEBベースの地図が主流となっており、スマートフォンを使いこなせないと旅行がしづらくなってきました。

30年間の中国旅行経験から、この変化がもたらす旅の利点と課題、そして中国旅行に必要な地図活用について解説します。

地図が売っていた場所

1990年代から2000年代後半までは、主要駅やバスターミナル周辺で様々なタイプの地図が手売りされ、3〜5元程度で気軽に購入できました。

西安駅前で時刻表は売っているか?(1992年8月)
西安駅前で地図や時刻表は売っていた(1992年8月)

売り子によって値段が微妙に違っていて値引き交渉をするのが中国旅の醍醐味で、楽しかったのを覚えています。

懐かしき紙地図の便利さ

折りたたみの地図は、かつての中国旅行における定番アイテムでした。紙媒体の地図には独自の魅力と利点がありました。

  • 広範囲をひと目で把握
    スマホよりも大きな画面で町全体を一望できる。
  • 自由な使い方
    広げたり、折りたたんだりして大きさを調整可能で、バックにしまいやすい。
  • メモの追加
    ペンで直接書き込みができて、記録として残せる。
  • イメージしやすい紙面
    繁華街や川は色付けされ、立地関係が分かりやすい。
  • バス路線の把握
    路線番号やバス停、経由地が記載され、観光の計画が立てやすい。

地図を使う楽しみ

特に北京や上海などの大都市や西安、蘇州のような観光都市では、地図の種類も非常に豊富で、外国人だけでなく中国人観光客に売っていたため、自分のニーズに合わせて選ぶ楽しみもありました。

旅行先で買った地図を片手に町歩きをするのが旅の定番でした。ビジネスで初めて訪れた方も地図で位置関係を確認するのに役だったかと思います。

1990年代に購入した紙媒体の地図(1)
1990年代に購入した紙媒体の地図(成都・西安・昆明など)

持ち歩く際に便利なので頻繁に開いたり閉じたりしていまして、使えば使うほど、折り目が破れてくるのが常でした。それ自体が旅を経験したといった達成感や趣きがありました。

地図は交通地図と呼ばれていて、大都市ですと毎年新しい版が出版されていました。

1990年代に購入した紙媒体の地図(2)
1990年代に購入した紙媒体の地図(北京・天津・瀋陽・大連)

デジタル化による紙地図の消滅

ところが、中国では2010年代になりますが、この10年間程の間に次のような背景があり状況が一変しました。

  • 急速なデジタル化
    スマートフォンの普及とデジタル地図アプリの登場
  • 4G&5G通信
    高速モバイルデータ通信の中国国内での普及
  • 紙媒体需要の激減
    デジタル媒体への移行による紙地図市場の縮小

その結果、駅前の地図売りの光景は完全に消え、現地で紙の地図を入手することがほぼ不可能になりました。

たまに書店で見かけることがありますが、折りたたみ式ではなく冊子形式が多く、書店自体も減少しているため入手は容易ではありません。

本屋に地図は売っているが・・・

実は、新華書店といった大手書店では、今でも地図は売っています。中国では本屋の数自体が少ないですし、折り畳みではなく冊子の形が多いです。デジタルマップが便利すぎて、冊子の地図を使う機会などほとんどありません。

紙媒体の地図はいったいどこに?

中国政府は外国からの観光客受け入れに力を入れておりまして、次の場所で折りたたみタイプの紙媒体の地図を無料で入手できる場合が多くなっています。

  • 国際空港
  • 観光案内所

日本では観光案内所で地図を手に入るのが当たり前ですが、デジタル化した中国ではそう簡単ではありません。

しかし、近年は外国人観光客向けのサービス向上に努めている都市が増えています。

スマホで地図活用

今の地図事情ですが、アプリを使いこなすことができなければ、訪れた町全体のバスや地下鉄路線の全体像が分からなくなります。

使いこなすことができれば、紙の地図以上の力を発揮しますがそうでなければ、逆に必要な情報が入手できなくなります。

スマホアプリは一長一短のツールです。中国語が分かればアプリの使い方も身に付きやすいと思いますが、視覚的な部分もありますので、路線バスの最短ルート検索は中国語入力ができなくても、地図は見ることができます。

まとめ ~変わりゆく中国旅のカタチ~

紙の折りたたみ地図が消え、スマホアプリが主流となった今時の中国旅行。便利になった面と失われた魅力の両面があります。

デジタル化はどうしても避けられない流れですが、旅の本質は変わりません。むしろ、地図を広げてルートを考える時間が減った分、目の前の風景や人々とのふれあいに、より多くの時間を費やせるようになったとも言えるでしょう。

中国の地図事情は、急速に変化する中国社会の縮図でもあります。紙の地図を片手に町を歩いた懐かしい記憶を持ちながらも、便利なツールを活用して、より深く、より便利に中国の旅を楽しみましょう。

30年間の中国旅行で培った経験から言えることは、道に迷うことも旅の醍醐味の一つだということ。時には地図を離れ、偶然の出会いや発見を大切にする旅もまた素晴らしいものです。

作者プロフィール

旅人@中国旅行一筋30年
旅人@中国旅行一筋30年ブログサイト「中国旅行ドットコム」運営者
1991年から30年間で70回以上の中国訪問歴を有するベテラン旅行ブロガー。

中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営。

大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。

【個人旅の実績】 訪問した省・市・自治区:32(残1) 訪問地:200以上
【印象に残る旅のエピソード】 数え切れず
【撮影した写真】 45,000点以上

安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。

1日100元以内での滞在に挑戦するなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、海外モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。

旅先での中国語会話を実践して、通じる中国語を教えることにも取り組んでいる。中国語に堪能でVIP通訳に従事したことがあり、訪日視察団のアテンドをしたことも。経験を活かして、コミュニケーション促進のための中国語も含め講師として教えて6年超。

ブログをご覧になられた読者との交流も大切にしており、いただいた質問に対応したり、いただいた情報をブログや動画に反映している。

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