【中国旅行の現金準備】 スマホ決済の落とし穴回避のための両替術

「中国はスマホ決済が主流だから現金は不要?」そう思っている方も多いのではないでしょうか。確かにその通りですが、万が一の事態に備え、現金(人民元)の準備は必要不可欠です。

初めて中国へ旅行する方から、筆者 ”旅人@中国旅行一筋30年” が受けた相談(LINEでのやり取り)をベースに、中国旅行で持っていくべき現金の金額の考え方の例を交えて、実践的に解説していきます。

スマホ決済が基本!現金は「お守り」代わりに

現在の中国では、アリペイやWechatPay(ウィーチャットペイ)といったスマホ決済が圧倒的に普及しており、日常生活のあらゆる場面で利用されています。

ほとんどのお店や交通機関でスマホ決済が利用でき、現金を使う機会は非常に少ないのが現状です。しかし、この便利さに慣れきってしまうと、思わぬトラブルに見舞われた際に困ってしまう可能性があります。

次のような4つのケースでは、現金が最後の砦としてがぜん必要になります。

① スマホの充電切れや故障

旅先で突然のバッテリー切れでスマホの電源が落ちてしまったり、予期せぬ故障でアプリが起動しなくなったりした場合、キャッシュレスでの支払いが一切できなくなり、身動きが取れなくなる可能性もゼロではありません。モバイルバッテリーを携帯していても、充電が間に合わない事態も考えられます。

② アプリの不具合や通信障害

アリペイやWechatPayのアプリ自体に一時的な不具合が発生したり、滞在先の地域で通信障害が起きたりすることもあります。電波状況が不安定な場所では注意が必要です。

③ スマホ決済に対応していない場所

大都市の中心部ではスマホ決済がほぼ完備されていますが、市場の小さな屋台、観光地の個人土産物店、あるいは地方の公共交通機関の一部など、いまだに現金のみを受け付けていることもあり得ます。

④ デポジットの支払い

ホテルにチェックインする際、宿泊費とは別にデポジット(保証金)の支払いを求められることが結構あります。特に、地方や郊外のホテルでは、現金でのデポジットが必要となるケースが少なくありません。

クレジットカードでの支払いも可能ですが、今回のLINEのやり取りでもあったように、クレジットカードの場合、返金処理に1週間程度かかることがあるため、すぐに現金が手元に戻らない不便さがあります。

ホテル側が現金でのデポジットを好むのは、物品の破損や追加サービス利用時の精算が迅速に行えることが言えます。

不測の事態に備えて

こういったことが生じることを想定して、現金は「お守り」として、いざという時に困らない程度の少額を用意しておくのが賢明です。これにより、旅の安心感が格段に向上します。

いくら両替すればいい?具体的な金額の目安

では、実際のところ、日本円を人民元にどれくらい両替すれば良いのでしょうか?今回のLINEのやり取りから、次の3点の要素を考慮して目安を立ててみましょう。

この金額は、万が一スマホ決済が全く使えなかった場合でも、初日の宿泊費と食事、交通費といった最低限の出費を賄える現実的なラインです。

初日の宿代デポジット

ホテルによってはデポジットが必要な場合があります。今回の事例では、羽田空港で500元(宿のデポジット)と100元(10元札10枚)を両替し、北京中心部でATMを利用するという計画が挙げられました。

これは非常に現実的で賢明な方法と言えます。クレジットカードでの支払いも可能ですが、現金で支払うとチェックアウト時の返金がスムーズな場合があります。特に、返金に時間がかかることを避けたい場合は、現金でのデポジットを検討しましょう。

初日の滞在費

食事代や交通費など、到着初日に必要な費用です。食事代は5元〜数十元と様々ですが、少し良いレストランや観光地価格のお店では、もっと高くなることも考慮に入れると良いでしょう。公共交通機関の利用や、ちょっとした買い物にも対応できる金額を見込んでおきましょう。

小銭対策

日本で中国元に両替すると、ほとんどが100元札(約2,200円)といった高額紙幣になりがちです。

しかし、バスの運賃(数元程度)や、露店での少額の買い物など、細かい現金が必要になる場合に備えて、10元札などの小額紙幣を数枚でも持っておくと便利ですし安心です。

今回のやり取りでは、羽田空港で10元札10枚を両替する計画が出ていました。

初日対策と小銭対策が重要

以上の点を踏まえると、初日のデポジットと小銭対策として、600元(約1万3千円程度)を日本で両替しておくのが一つの目安となるでしょう。

これは、慕田峪長城のホテルデポジット500元と、小額の支払いに便利な10元札10枚(100元)となる金額です。その後、北京の中心部へ移動すれば、ATMが多数ありますので、必要に応じて追加の現金を引き出したり両替することが可能です。

【 両替額600元の内訳 】

  • ホテルデポジット:500元
  • 当座の食事代や交通費:100元(約2,200円)

両替場所を決めるポイント5選

LINEのやり取りでは、質問者から両替場所として「トラベレックス」や「SBJ銀行」の名前が挙がっていました。

では、どこで両替するのがおすすめなのでしょうか?具体的な場所を示すのは実際のところ対象が多すぎて難しいため、どのように選ぶべきかを解説します。

両替場所を選ぶ際のポイントは次の5点です。これらを比較検討し、ご自身の旅行スタイルに合った方法を選びましょう。

  1. 手数料・レート
    両替商や銀行によって手数料やレートが異なります。出発前にインターネットで各社のレートを比較したり、外貨両替シミュレーターを活用したりして、最もお得な場所を見つけることをお勧めします。
  2. 対応言語
    中国現地の銀行で両替する場合、日本語が通じないことを考慮に入れると良いでしょう。英語が通じるとは限りません。言葉の壁を避けたい場合は、日本の国際空港の両替所での事前両替が安心です。
  3. 所要時間・混雑状況
    空港や銀行での混雑状況なども考慮に入れると良いでしょう。特に、空港の両替所は出発直前に利用できるため便利ですが、観光シーズンなどは長蛇の列になることもあります。
  4. 営業時間
    今回のケースのように、出発時刻が早朝の場合、空港の各両替所の営業開始時間を確認することが重要です。早朝便を利用する際は、間に合えば選択肢に入れていただければOKです。難しい場合は、事前に他の所で、又は、他サービスを利用して両替を済ませておくか、24時間対応のATMを利用するなど対策が必要です。
  5. ”旅プロ” 独自の視点(安心感)
    慣れない中国での両替は不安が伴います。空港や市内の銀行支店で両替したり、ATMで出金することができますが、多少手数料が高くても、信頼できる大手両替商や、名前の知れた銀行を選ぶことで、心理的な安心感を得られます。

今回のケースでは、旅行者は「出発前に日本で両替を済ませておく」ことで、現地での手間や時間を省くという選択がなされています。特に、到着後すぐに郊外へ移動する場合や、ATMが近くにない場所へ行く場合は、手数料が生じたとしても、日本での両替が最も安心で合理的な選択肢となります。

小銭への両替は現地で!100元札を賢く崩す方法

日本で中国元を両替してもらう際、多くの両替所では100元札(約2,200円)といった高額紙幣が中心になりがちです。これは、両替所の在庫管理や手数料の関係上、細かな紙幣を用意するのが難しいという事情があるためです。

しかし、中国現地では、キャッシュレスに対応していないバスの運賃(通常1〜2元)、小さな露店での買い物、あるいは自動販売機など、少額の現金が必要になる場面が生じるケースがあり得ます。

手元に100元札しかないと、お釣りが用意できないと言われたり、最悪の場合、偽札対策の関係で支払いを断られてしまう可能性もゼロではありません。

そのため、現地に到着してから、賢く100元札を崩して小銭を手に入れる方法を知っておくことが、快適な旅の鍵となります。

100元札を崩す場所 ベスト4

最も手軽で確実に小銭に両替できる方法は、コンビニやスーパーなどで少額の商品を購入することです。

  • コンビニエンスストア(便利店:biànlìdiàn)
    飲み物、お菓子、パンなど、単価の低い商品を選び、100元札を出してお釣りをもらいましょう。都市部には「全家(FamilyMart)」、「セブンイレブン(7-ELEVEN)」、「羅森(LAWSON)」などの日系コンビニも多く、比較的安心して利用できます。中国系も含めれば無数に店舗があります。
  • スーパーマーケット(超市:chāoshì)
    少額でもOKですし、少し大きめの買い物をする際に利用ることもできます。レジの数が多く、小型店舗よりもお釣りの準備が整っていることが多いです。
  • フランチャイズチェーンの飲食店
    マクドナルドやKFCなどのファストフード店、スターバックスなどの大手カフェチェ―ンでも、比較的スムーズに100元札を崩せる場所と言えます。
  • 地下鉄の駅
    自動券売機では小銭が必要になることがありますが、窓口に行けば、少額の切符購入で100元札を出すことが可能です。ただし、混雑時は避けるのが賢明です。

小銭がない場合の対処法

もし、「どうしても100元札が崩せない」、あるいは、「小銭が足りない」という状況になった場合は、次の方法を試してみてください。

  • 宿泊施設のフロントで相談する
    宿泊しているホテルのフロントであれば、外貨から人民元への両替はできなくても、人民元であれば小銭に崩してくれる場合があります。ただし、これはあくまでサービスの一環であり、必ず対応してくれるとは限りません。
  • 銀行の窓口
    都市部の銀行であれば、窓口で両替や小銭への交換に応じてくれる可能性はあります。ただ、手続きに時間がかかり、言葉の壁があります。旅行中に時間を割くのは避けたいところですが、円の両替をする際にお願いするといった併用テクニックを使う手もあります。

これらの方法は、あくまで最終手段として考え、基本的には「買い物をしてお釣りをもらう」という方法で小銭を確保することをお勧めします。

【上級技】デポジット返金は交渉次第でスマホ決済が可能に?

こちらは上級テクニックですが、ホテルによっては、デポジットの返金を現金だけでなく、アリペイやWechatPayへの個人間送金で対応してくれるケースもあります。

中国では個人間の送金も日常的に行われているため、ホテル側も柔軟に対応してくれるケースが多いからです。これにより、手元に大量の現金が残ってしまうことを避け、帰国時の再両替の手間や手数料を節約できます。

今回のやり取りでは、質問を受けてから2時間で具体的な中国語フレーズの提案をいたしました。シチュエーションの検討、ホテルスタッフの対応など、場面検討をした上で、旅経験者として「これなら使える」中国語の表現を提案しました。

チェックアウト時に、ぜひこのフレーズを使って交渉してみてください。

【中国語かんたんフレーズ】

  • 退押金,现金200块,支付宝300块,可以吗?

これができると、スマホ決済が使えない場合のバックアップ手段として非常に有効です。このフレーズを見せるだけでも役に立ちます。

他にも、「丁寧な言い方」「提案調の言い方」がありますが、旅経験豊富な日本人中国語講師が提供予定の中国語レッスンを受けますとこのような旅に直結した表現を学ぶことができますし、フレーズの発音についても丁寧な指導を受けることができます。

(まとめ) 賢く備えて快適な中国旅行を!

中国旅行ではスマホ決済が非常に便利で、旅のスタイルを大きく変えるツールであることは間違いありません。しかし、だからといって現金を全く持たないのはリスクが伴います。万が一の事態に備えて、少額の現金(人民元)を用意しておくことが、より安全で快適な旅を実現するための賢明な選択です。

  • 両替額の目安は600元(12,000円程度)
  • 初日のデポジットや滞在費、小銭対策を考慮した内訳
  • 日本での事前両替を検討、現地で生じる手間を削減
  • 小銭は現地での買い物で効率的に手に入れる
  • デポジットの返金はスマホ決済での交渉も可能、現金が手元に残るのを避ける

これらの情報を参考に、あなたの中国旅行が不測の事態にも動じない、充実した素晴らしい体験となることを心から願っています!以上、”旅人@中国旅行一筋30年”がお送りしました。

筆者情報

旅人@中国旅行一筋30年
旅人@中国旅行一筋30年ブログサイト「中国旅行ドットコム」運営者
1991年から30年間で70回以上の中国訪問歴を有するベテラン旅行ブロガー。

中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営。

大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。

【個人旅の実績】 訪問した省・市・自治区:32(残1) 訪問地:200以上
【印象に残る旅のエピソード】 数え切れず
【撮影した写真】 45,000点以上

安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。

1日100元以内での滞在に挑戦するなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、海外モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。

旅先での中国語会話を実践して、通じる中国語を教えることにも取り組んでいる。中国語に堪能でVIP通訳に従事したことがあり、訪日視察団のアテンドをしたことも。経験を活かして、コミュニケーション促進のための中国語も含め講師として教えて6年超。

ブログをご覧になられた読者との交流も大切にしており、いただいた質問に対応したり、いただいた情報をブログや動画に反映している。

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