中国ビザ免除措置 ”延長” を深掘り解説
新聞やテレビなど、メディアのニュースでご覧になられました「日本人に対する中国ビザ免除措置の延長」について、メディアが報道しなかった裏側を旅プロの目線で分かりやすく徹底解説していきます。
Youtube動画 中国の対日ビザ免除、延長決定!【旅人@中国旅行一筋30年が解説】もアップしましたので併せてご覧いただければ幸いです。
本記事の筆者
旅人@中国旅行一筋30年(筆者紹介)
ブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営する中国旅行の専門家。
34年間で70回以上の中国訪問歴を有し、チベットを除き全ての31省市自治区、全国230ヶ所を訪問済。
中国渡航の予定がある方や旅行を計画している方に向けた役立つ様々なノウハウや情報を発信中。

一次情報
今回のニュースは、日本人旅行者にとって非常に重要な、中国短期ビザ免除措置の延長についてです。最も重視すべき情報はどこなのかをお話しします。メディアの報道ではこの部分が時間の関係も省略されています。
中国外交部定例記者会見
事実を順番に検証しますと、外務省にあたる中国外交部の毛寧報道官が2025年11月3日の定例記者会見での出来事です。
質疑のやりとり
湖北省にあるメディア記者からの質問「一部の国に対する一方的なビザ免除措置は今年末までの期限ですが、本政策の延長はあるか?」に答える形で発表したのがビザ免除措置延長の発端です。

毛寧報道官は、特定の国に対するビザなし政策の延長に関する公式決定を伝えています。
動画で雰囲気をつかむ
中国外交部はこの部分のみ抜き出した38秒間の動画を公開しています。毛宁:中方延长免签政策(2025年11月3日)
質問者の映像が入っていないのが中国らしいですね。あくまでも政府機関の公式発表のみ外交部ホームページに掲載するという明確な姿勢が見えてきます。長年中国とつきあっていますと、動画を見るだけでもちょっとしたことに気づくものです。

領事司からの公式発表の47分後にアップされたものです。全文中国語です。他の報道官とともに記者会見は慣れているはずですが、日付を間違えると大変なことになりますので、原稿を目を落として見ながら発言していることが見て取れます。
発表内容の趣旨
この政策は、中国共産党の重要会議のおける精神を貫徹すること、対外開放の拡大と国内外の人的交流の継続的な円滑化という国家戦略を反映しているものです。

内容の趣旨ですが、フランスなど一部の国に対するビザ免除措置を2026年12月31日まで延長することが決定されました。さらに、スウェーデンに対しては2025年11月10日から新たにビザ免除措置が導入されることも発表されただけです。
筆者の所感
中国語で表現している内容を確認する限り、「日本」とは一言も触れていません。日本がビザ免除措置延長の対象かどうか分からず、これだけをニュースの根拠にするには薄すぎます。
あくまでも日本のことを取り上げているのではなく、中国政府としては、40ヶ国以上もあるビザ免除施策を延長するということ自体を淡々と発表しているだけ、日本を持ち上げるとかいったことは一切ないことに注目すべきだと思います。
公式発表
必ず何か根拠があるはずなので探しました。ポイントは毛寧報道官の最後の言葉「具体的には外交部領事司及び在外公館から発出される通知をご確認ください。」(原文は中国語)にあります。
記者会見の概要がWEBにアップされたわずか30分後に、中華人民共和国外交部領事司(中国领事服务网)の公式ページ内の通知でした。発表日時は北京時間2025年11月3日18時10分過ぎでした。
タイトルは「一方的なビザ免除政策の延長に関する通知」でした。実際の公式発表のページはこちらです。

掲載内容
- 対象国
- 延長期間
- 条件
- 目的
① 対象国
添付ファイル参照とありました。日本では余り見かけないファイル形式でそのままではアプリの紐付けがなく開けないので、開き方を確認して表示させることができました。

こちらのリストには「日本」とありました!毛寧報道官が「フランス」などと言ったのは、名簿の最初の国がフランスだからだです。
② 延長期間
この発表文書に、日本を含む12カ国/複数国に対して、ビザ免除を2026年12月31日24時まで延長する旨が明記されており、現時点で「公式に確定した」と見てよい状況です。
③ 免除の条件
この措置は、一般旅券を所持する人が、ビジネス、観光、親族・友人訪問、交流、またはトランジット目的で30日を超えない場合に適用されます。
留学や就労など、これらの条件を満たさない目的での入国には、引き続きビザの取得が必要です。
④ 目的
両国国民往来の利便性向上について述べています。中国外交部の毛寧報道官は、記者会見でこの措置が「対外開放を拡大する」ためであると説明しています。
二次情報
ここからは一次情報の公式発表を受けた報道や投稿に関する深掘りをしていきます。
日本メディアの報道と経緯
毛寧報道官の発表を受け、日本のメディアでは「中国がビザ免除を延長」といった見出しが続出しましたが、日本側から見たその背景説明があるケースはありましたが、中国側から見た背景についてはどこも解説していません。
そこで、旅メディアの「中国旅行ドットコム」の出番です。旅プロの筆者「旅人@中国旅行一筋30年」が解説します。
発表の経緯
きっかけは11月3日の毛寧報道官の定例記者会見でしたが、この時点の中国語版の発言には「日本」という言葉は登場せず、欧州諸国が例示されているだけでした。
しかし、外交部のビザ発給所管部門(領事司 → 日本語では領事局に相当)公式サイトのリリースを確認すると、添付ファイルの対象国一覧に「日本」が含まれていました。これがビザ免除の大元の一次情報です。
日本経済新聞
発表翌日11月4日早朝に、日経新聞はWEBで報道しました。共同通信からの配信記事です。いつ配信されたものかは有料サービスに入らないと分からないのかもしれません。

TBS

別ル―トからの公的な補強情報
実は、在中国日本国大使館は発表翌日の11月4日付けで、中国政府が日本国民に対する一般旅券保持者のビザ免除措置を2026年12月31日まで延長する旨を掲載しました。

大使館の発表ですので重みがあります。裏取りがなければ掲載することはないでしょうから、ビザ延長の情報は間違いないという太鼓判で間違いありません。ちなみに、出典は私が示したものと同じです。
中国メディアはどのように伝えたか
メディアの報道内容についてを日中で比較します。人民日報のWEB版であります「人民網」での報道です。
人民網
11月3日の新華社からの配信ということで記事が掲載されています。日本経済新聞の共同通信配信と同様な形です。
中国語の記事を読む限り、基本的に一次情報の「中国領事含む網」公式発表を若干の修飾語を添えてそのまま掲載しています。

半島網
こちらは山東省のメディア「半島網」からの記事です。よくあるパターンです。公式発表をそのまま転載したもので、人民網よりもそのまま度が高いといいますが、そのままの内容です。

中国人が伝える「ビザ延長」
では、メディア以外で中国人はどのようにビザ延長措置を伝えているか、日本に対する話題として投稿している2つの例を挙げてみます。
個人の投稿
生の声のひとつとして解説します。中国宣布对日本免签再延长一年!日本网友竟这么说!(老田随便说)

日本でのニュースを載せたり、どこかの掲示板の投稿でしょうか。日本語コメントの中国語訳を掲載されています。

個人の声を載せているというのがメディアでは行っていない特徴です。こういった内容を通じて、日本人が個人レベルでどのように考えているのかを伝えています。
関連性が薄い写真が多いのでスクショは略しますが、次のようなコメントがありました。印象に残ったのは次の3点です。
- 本件について全く関心を示さない市民も多いですが、全体として見ればビジネスの往来にとっては非常に便利であり、ビザ免除延長により日中両国の貿易協力はさらに円滑になるでしょう。
- 四川省成都市内にある旅行会社の責任者は「ビザを申請する必要がなくなれば、多くの旅行者が四川にいるシャンシャン(香香)を見にに来るはずです。皆さんの来訪を熱烈歓迎します。」と述べています。
- 「ビザ免除による入国の背後には、ビジネスでの協力のチャンス、一般の人々の人生における忘れられない旅路があるかもしれません。」という趣旨の言葉で語られています。
基本的に二次情報を踏まえて独自のコメント交えた記事だと見受けられます。全般的に好意的なトーンでした。
企業の投稿
こちらは民間企業の投稿です。中国語本文を読みますと大阪在住の「日本物語」というアカウントからの投稿を掲載しています。
中国宣布对日本免签延长一年!日本网友:“终于又能去吃正宗小笼包了”(千秋日语)

日本在住の中国人が見た眼とはなりますが、どのようなコメントが書かれているのでしょうか?

日本人のネット上のコメントについて、在日中国人の方は次のような見方を持っています。
- 日本では多くのネットユーザーの反応が率直なものです。
- ある人は「また中国に行って本場の小籠包を食べられる」と言い、別の人は「言葉の壁は依然として障害だ」と心配しています。
- 多くの声は好奇心と期待です。皆さんは今の中国を見てみたい、ニュース報道の枠を超えた現実の中国を見てみたいと考えています。
全てを網羅している訳ではありませんが、このような普通の日本人の声を集めて情報を発信していることは、中国人が日本人がどう考えているかを知るひとつの手がかりになるはずです。
筆者の見解
旅を通じて30年以上中国を見てきた視点から見ますと、今回の延長は、実質的に中国政府にとって避けられない選択肢だったと言えます。
- 経済的な動機
- 面子の問題
- 外交的なメッセージ
- ビジネスへの影響
経済的な動機
日本のインバウンド政策と同様に、中国経済回復のためには、外国人観光客の消費を促したい時期であり、外国人は消費をしてもらえる「重要な消費者層」として扱われています。
経済の低迷を打開し、外国からの投資を積極的に受け入れる姿勢を示すためにも、この措置の延長は極めて重要でした。
「面子」の問題
中国では「面子」(メンツ)を非常に重んじられます。政府が一度方針を発表したものを、よほどの理由がない限り取り消すのは難しい。「延長しない」という選択肢は、今の状況では現実的ではありませんでした。
外交的なメッセージ
別の視点で、ビザ免除延長措置は複雑な国際情勢下におけるメッセ―ジと考えてみてはいかがでしょうか。
単なる手続きの簡素化の維持に留まらず、停滞していた日中間の交流の再構築の象徴としても見ることができます。
両国の理解と協力を促進するものと期待できるものであり、一方的にいわば国境を開放を続ける姿勢は中国の国としての自信の現れとも言えます。
ビジネスへの影響
中国ビザ免除措置は、コロナ禍で2020年3月に停止された後、2024年11月に4年半ぶりに再開されたばかりでした。
当初の期限が今年12月31日だったため、延長がなければ、再びビザ取得が必要となるため、日中間の往来が再び停滞する恐れがありました。
今回の延長措置は、日中間のビジネスにおいて中国側の前向きな姿勢を示すものとして受け止められてるといってよいでしょう。
短期ビザ免除によるメリットや活用法
ビザ免除延長によって今後も中国旅行は敷居が高くならずに済みました。次のようなメリットがあります。
- 柔軟性の向上
- ビジネスの円滑化
ビザなし渡航の具体的な活用シーン
例として、次のケースがあります。
- 急に休みが取れて航空券が手配できたのでふらり中国へ。
- 週末や連休を利用した超短期間の弾丸旅行。
- 上海の外灘や新天地、ディズニーランドといったスポットを気軽に訪問。
- 現地で本場の麻辣湯(マーラータン)を食べる。
- 他国へ行く途中にトランジットで立ち寄る。
ビザ申請プロセスが不要なことで、急な用務や急に取れた休みにも対応可能です。航空券とパスポートさえあれば、すぐにでも出発といったスタイルが可能です。
また、出張、視察などでも、招聘状の入手など、面倒な手続きに煩わされることなく柔軟に対応できます。
活用方法について詳しく解説した記事「旅プロ視点で語る《中国ビザ免除》徹底活用法!」も併せてご参照ください。
質問、相談は筆者まで
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筆者情報

- ブログサイト「中国旅行ドットコム」運営者
-
1991年から30年間で70回以上の中国訪問歴を有するベテラン旅行ブロガー。
中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営。
大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。
【個人旅の実績】 訪問した省・市・自治区:32(残1) 訪問地:200以上
【印象に残る旅のエピソード】 数え切れず
【撮影した写真】 45,000点以上
安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。
1日100元以内での滞在に挑戦するなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、海外モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。
旅先での中国語会話を実践して、通じる中国語を教えることにも取り組んでいる。中国語に堪能でVIP通訳に従事したことがあり、訪日視察団のアテンドをしたことも。経験を活かして、コミュニケーション促進のための中国語も含め講師として教えて6年超。
ブログをご覧になられた読者との交流も大切にしており、いただいた質問に対応したり、いただいた情報をブログや動画に反映している。
詳細は作者紹介をご参照ください。問合せはこちらまで。
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