【徹底解説】中国滞在中、支払方法は何がある?

中国への旅行や出張、視察者必見のスマホ決済(WechatPay・アリペイ)や現金、クレジットカードなど決済方法の詳細を解説します。コロナ禍で変化するキャッシュレス決済の現地状況、中国人の消費傾向、世界のクレジットカード取引数などの統計情報を織り交ぜ、中国の決済環境の理解を深めるための情報満載の記事となっています。

様々な流れの変化を読み取りつつ、中国へ渡航し、現地で滞在する日本人すべての皆さんに共通する中国での買い物・飲食・サービスなどにおける決済方法について、様々な視点から解説しています。

キャッシュレス決済の中国での位置付けがコロナ禍による大きく変化や中国人の消費傾向をひも解きつつ、世界のクレジットカード取引数など各種統計数字を織り交ぜて背景説明も手厚くしまして、全体の構成変更や加筆、周辺情報や画像、データの追加などを行いました。

かなりの長文記事となりますが、包括的にカバーしており、厚みは増していますので関心のある部分だけでも読まれると参考になるかと思います。各部分ごとに読むことも可能なので、関心がある決済方法の詳細をピンポイントで読むだけでも参考になります。

本ページの構成

冒頭部分(1~2)
日常生活で中国人が使う決済手段が形成されるまでの経緯について概略的説明をはじめ、2010年代以降の決済手段推移やスマホ決済が普及する背景、日本人と中国人の比較でスマホ決済の使用傾向を統計数値を使用しながら解説。

中間部分(3~10)
現金・スマホ決済・クレジットカードなど、決済手段の種類ごとに詳細を解説。

終盤部分(11~13)
中間部分の内容を踏まえて、決済手段それぞれの難易度やいったいどの決済手段を選べばよいのかについて比較表を織り交ぜつつ解説。

<補足説明>
質問や疑問がありましたら、最後に質問フォームを設けていますので、遠慮なくしてください。目次から又はスマホ版左上の三本線メニューボタン、PC版上部のメニューにもリンクがあります。目次に戻るには、右下にある四角に囲まれた「∧」をクリックしてください。

目 次

地盤沈下するクレジットカード決済

中国でのクレジットカード決済にまつわる状況も大きく変わりました。具体的には、2020年から3年以上にも及ぶ新型コロナ感染に伴い、中国への外国人入国者数が激減したことが原因です。

クレカが使えなくなる大きな動き

海外発行のクレジットカードを中国語で「外卡」(Waika)と呼ぶのですが、その取扱いを止める事業者が増加して、クレジットカードを読み取るPOS機と呼ばれる端末が減ってしまいました。中国では元々クレジットカードを利用する人は少なかったことが廃止への追い打ちをかけました。

決済を取り扱うのは銀行なのですが、その銀行の多くがクレジットカード決済業務から撤退という動きもあり、外国人がコロナ後に中国に滞在して、WechatPayやAliPayが幅を利かせる姿に驚きは隠せないと思います。

外国人が多く利用する高級ホテルや飲食店は今でも利用可能ですが、使える店舗数は確実に減っており、クレジットカードの中国での相対的な価値が減少しています。

その理由として、サービス提供者に対する手数料の差が挙げられます。例えば、キャッシュレス決済は0.6%以下に対して、クレジットカードは1%~3%と負担の差が大きく、コロナで3年以上ほとんど外国人が来ない状況が続いたことで撤退が続発したという背景があります。

銀聯カードも同様に使えなくなりつつある

銀聯カードですが、こちらは中国人が銀行口座を開設すれば、漏れなくついている機能ですが、多くの店舗で決済端末取扱いを止める動きがあるため、決済できる店舗が減少している傾向はクレジットカードと変わらないようです。

外国人の中国での決済の不便さを軽減する動き

一方で、外国人が参加・出展する、国際展示会やスポーツ大会などの大規模イベント開催を通じて、クレジットカードが使えるように、POS機導入を主催者や地方政府などが取り組む事例があります。

毎年秋に開催される、広州交易会や国際輸入博覧会(上海)、2023年夏に実施された杭州アジア大会、成都の第31回世界大学生スポーツ大会などがこの事例が行われた国際イベントにあたります。

取組みの結果、上海、杭州、成都などの都市では、他の大都市と比べてクレジットカードが使いやすくなっています。上海では高速鉄道など列車の切符が購入できるとのことです。

中国人は日常どのような決済手段を使用するの?

2010年代前半までは、中国では現金以外の決済手段といえばキャッシュカードに標準で付いてくる銀聯カードでした。クレジットカードは古くからあったのですが、審査が必要なことは加盟店が少ないため、海外旅行での使用を除いては、中国国内では浸透しませんでした。

ところが、2010年代後半になりますと、4G対応やスマートフォンの普及などモバイル通信の発展によりスマホ決済が登場することで、中国人の日常生活での決済手段が大きく変化しました。

4G及び5Gの普及

ここから背景説明に入ります。年々通信速度が増加していて、スマートフォンを使ってデータ通信するのが日本と同様に中国でも当たり前の世の中になりました。2017年時点で基地局の半分は4G、2022年は6割は4G、2割は5Gとなっています。

中国における4G・5G基地局設置状況
中華人民共和国工業和信息化部「2022年通信业统计公报」

携帯電話の普及頭打ちに

携帯電話は2014年時点で94.5%でしたが、2017年には100%を超えて、2台持ちも含めて全員持っているくらいの数量となっています。

携帯電話普及率推移
中華人民共和国工業和信息化部「2022年通信业统计公报」

移動データ通信及びインターネット業務の収入推移

2015年~2017年までの増加率(折れ線グラフ)はそれぞれ27.2%、38.3%、27.6%の増加がありましたがモバイルデータ通信が広まった裏付けとも言えます。その後は数値的には落ち着いている状況の中、前記のように5G基地局が増加し、通信環境の改善が進んでいます。

中国における移動データ通信収入状況
中華人民共和国工業和信息化部「2020年通信业统计公报」「2022年通信业统计公报」

このような通信綿でのハードが整ってきたことはスマホ決済が普及したことと大きく関係すると言えるのではないかと思います。

現金以外の支払手段の決済割合

急成長を遂げる前の2014年のカードに絞った支払手段のシェアの数字を見ていただきますと、銀聯は57%、VISAカードは30%、MASTERカードは11%、AmericanExpressは2%、海外勢は合わせて43%と追い抜かれていましたが、それなりの割合はありました。

2010年代後半に新たな決済手段が登場

2013年から2015年まではモバイル決済(スマホ決済)の普及率はライバル視できないくらいの小さい数字でしたが、2016年には4分の1に伸長し、それ以降はグラフを見て分かるように急成長をとげました。

上昇幅を見ますと、2016年と2017年のモバイル決済の伸びが著しいのは、前記の移動データ通信収入の大幅増とリンクしてる側面があるかと推察しています。

コロナ拡大前の2019年には6割近くをモバイル決済が占めていました。クレジットカードは6年間、伸びが全然見られませんでした。

中国における現金以外の決済手段の普及状況

続いて、中国国内でのスマホ決済がどれだけ普及していて、現金の扱いがどうなっているかということについて、次以降で解説していきたいと思います。

現金(人民元)

中国のキャッシュレス化は日本よりも進んでいまして、スマートフォンの普及や4G、5Gといった通信環境が安定したことでキャッシュレス決済が浸透したため、人民元の流通が減少しており、現金の肩身が狭くなっています。

中国人が現金を使う頻度は確実に減っています。私自身も、2019年以降の旅では現金が主役から降りてしまいましたので、持っていく現金の金額が減りました。

90年代以前に主流だった人民元紙幣
90年代以前に主流だった人民元紙幣と硬貨

とはいうものの、ご年配の方や小さな子供まで、中国人全員がキャッシュレス決済を使っているとまではいかないので、現金の流通は当然ながらありますし、今のところは現金なしの経済はあり得ません。

一方で、中国でのキャッシュレス決済は、旅行で訪中する外国人にとっては、スマホだけに頼ることはリスクがあるため、複数の決済手段を持つために、現金も頼らざるを得ないのが現状です。

通貨単位

中国で通用する通貨は「人民元」と呼ばれています。単位は「元」です。
「元」・「角」・「分」という単位があります。1元=10角、1角=10分です。

紙幣
100元、50元、20元、10元、5元、2元、1元、5角、2角、1角がありますが、2元や5角以下のお札はほとんど流通しておらず、見かけることはまずありません。

硬貨
1元、5角、1角、5分、2分、1分とありました。相次ぐ物価上昇のため、2010年代以降は、角・分はほとんど使われなくなりました。使う場面が減ってしまい、お釣りで使われる1元と5角硬貨以外は壊滅してしまったと考えてよいでしょう。

2019年発行 人民元紙幣&硬貨

現金は高額決済に向かない

100元札が人民元の最高額なのですが、1980年代くらいまでは100元と言ったら大金でしたが、物価のインフレで価値が大きく下がりました。

現金をたくさん持つということは、財布などにしまう必要があり、盗難などセキュリティ上のリスクがあります。例えば、高級ホテルに泊まる場合、下手をすれば100元札が何十枚も必要となります。枚数だけで言えば日本円で何十万を使うような肌感覚を覚えるかもしれません。

昔から偽札が流通しており、分別するための偽札読取機が商店や飲食店に常備されています。現金に対する信頼性や高額決済への不便さが相まって、2010年代半ばから非現金のキャッシュレス決済が爆発的に普及しました。

低額決済でも無慈悲な扱いの現金

市内を走る路線バスですが、ほぼ全てが料金箱に入れてもお釣りが出ません。小銭がないと、余分なお金を入れてしまわざるを得ないことがあります。運賃差別というと語弊があるかもしれませんが、値段の差を体感することがありました。

2023年9月のエピソードですが、北京市内の路線バスは交通カードやスマホ決済による利用であれば、運賃が5割引(郊外は2割引)となりますが、現金はそれがありません。割引運賃なら5元だったのが、現金だと運転手に言ったら「10元だよ。」と言われて、不条理を感じました。

いったい現金を何元持っていけばよいか?

では、いくら人民元を持っていけば良いのでしょうか?最大いくつの決済手段を準備できるかにもよりますが、ATMで元を引き出すことできるキャッシュカードやクレジットカードをお持ちで、WechatPayやAliPayをメインで使うのであれば、何千元も持つ必要はないと思います。

少額にしたメリットとして、腹巻のような貴重品を入れるケースを2019年の旅行まで使っていましたが、今回初めてそれを使わないことになりました。お腹周りがすっきりした気分で、シャワー浴びる時などセキュリティに気を付けないといけないものが一つ減ったのは、心理的に大きなプラスだったと思います。

1日あたりいくら現金が必要か?

2023年9月のコロナ後初の旅行のときは約200元の現金を持参しました。現地の銀行口座があるので、キャッシュカードを持参しました。通信環境が使えなかった最初の3日間は、手持ち現金とATMでおろした現金、銀聯カードを併用してしのぎました。

いくら現金が必要なのかを解説した中国旅行に現金は一体いくら必要か?も併せてご覧ください。

円から人民元への両替方法

日本円から中国の人民元に両替できる場所は大きく4つあります。プラスしてキャッシングという手段があります。それぞれ特徴がありますので解説します。

日本国内の両替商

出発地の国際空港にはレートは良くありませんが両替する事業者が多数いまして、通販で買えるサービスがあったり、街中の金券ショップで入手ルするなど、いくつかルートがあります。両替レートは他と比べて最も悪いのでどうしても両替したい場合を除いてお勧めしません。

到着地の国際空港

両替手数料が50元のところが多いようですが、1万円で500元も両替できない中で痛い手数料です。ひとりだと高いですが、グループで行かれる場合はまとめて両替することで、一人当たりの手数料が安くなります。

大手銀行

手数料は不要です。外貨両替の表示が英文「Exchange」とともに表示がある中国建設銀行、中国工商銀行、中国農業銀行という超大手や浦東発展銀行などの大手銀行の主要支店で両替できます。その時のレートで人民元へ両替することができます。

外貨両替できる窓口がある銀行の入口に必ずこの表示があります

北京や上海など大都市でしたら両替可能な支店は各所にありますが、県クラスの町ですと中心部に1ヶ所しかないというケースも多いので、大都市滞在中に両替することをお勧めします。日本円現金の両替を取り扱っていない所もありますので、確認が必要です。

両替するときに使える中国語表現

ひとこと中国語のフレーズ
 「换人民币」(元を両替する)
 発音:huàn rénmínbì
を覚えていただけると話がより早くなります。

ホテル

4星以上の高級ホテルですと両替所がありますので、ホテルのサービスの一環として日本円を含めた外貨を人民元に両替することができます。
ホテルまでの交通費を用意できさえすれば、ホテルでの両替も一つのやり方です。ただ、宿泊者のみ適用できる手段です。

キャッシング

日本で発行されているクレジットカードや一部キャッシュカードは中国にあるATMでキャッシングができます。街中には24時間出金できるATMが多数あります。「自助銀行」という文字が目印です。空港のATMも同様で、両替できるクレジットカードのステッカーが貼ってあるものもあります。

北京郊外にある24時間ATM(中国工商銀行)2023年9月

数は多いですが、キャッシュレス決済が浸透してきており、現金の使用頻度が低下しているため、ATMが減少していく傾向にあります。

預金額からの引落しという仕組みを採っているキャッシュカードを除き、返済が生じますので、利率が高いので早めに返済しましょう。

現金が不便になっている実際の経験談

現金が使えなくなったわけではありませんが、不便になっている現象がたびたびあり、作者自身も経験しました。3つの体験談を紹介します。

体験談① ~店舗やバスで「お釣りがない!」~

日本円から元に両替して最初に手にする現金の大部分は100元札なので、それをどうしても使わなければなりませんが、店舗ではお釣りの備えが少なくて、50元札や100元札を出すと「お釣りがない。」と断られるケースが増えています。

また、市内の路線バスに乗る際は、1元、2元といった均一運賃で、お釣りがでないように小銭を財布に常備しないと、日本のバスのように両替したり、おつりが自動的に出るといった運賃箱は中国では存在しません。運賃箱はお金を入れるためのただの箱です。中国旅行を1990年代初めからしていますが、30年来見たことがありません。

体験談② ~元両替時に小銭を省略~

日本円を人民元に両替する際、小数点以下のお金をくれなかったので、それを指摘しましたら、銀行では分がなかったため、角に繰り上げて、1角をくれました。何も言わなければそのまま差額が生じたままでした。逆に、何も言わなくても1元未満を繰上げて元をくれた事例もありました。

盗難を防ぐため、できる限り100元札を何枚も人前で見せないようにしたり、宿で次の日に使うかもしれない100元札を出して、他はセキュリティーポーチに入れておくなど、30年来ずっと安全対策をしています。おかげさまで、現金が盗られたことは記憶する限り、1回。それも本当に盗られたかどうか確証がないものでした。

古い使い古しのお札が流通していますので、自動販売機に入れても認識せずに戻ってきたり、入らなかったりすることがままあります。

体験談③ ~ホテルのデポジット~

ホテル、特に2つ以下のホテルに泊まるときに、デポジット(押金)を要求されます。その金額は1~2泊分の金額を指定されることが多いです。

100元札が何枚も出さなければならず、手持ちの現金が減るのが負担になるのと、面倒なこと、セキュリティ的に現金を多く持ちたくないことがありまして、100元以上するホテルに泊まることをやめることは多々ありました。

それでも現金決済はなくなりません!

中国の中央銀行である中国人民銀行は2018年7月に現金による支払いを拒否してはいけない趣旨が含まれた内容の通知を発しています。市中の商店などでの現金の受取が頻発したことが背景にあります。

重要通知 中国人民銀行広告(2018)第10号 2018年7月4日付

画面赤線部分ですが「中華人民共和国の法定通貨は人民元である。これには紙幣及び貨幣が含まれる。(以下「現金」と称する)いかなる法人、個人は条項、通告、声明などの方式により現金の受取拒否はできない。」と明示されています。

一方、灰線部分をご覧いただきますと「消費者の支払方法の選択権を保証するために非現金の支払手段を採用することを奨励する。」という記述があります。これは決済のキャッシュレス化を進める意志表示と言えます。

この通知により、国の施策として現金による決済は保護されていますので、それを知らない人が拒否することはありますが、この通知を見せればよいかと思います。

スマホ決済(WechatPay・AliPay)

いわゆるQRコード決済のことでして「WechatPay」「AliPay」がその代表格です。これらは日本の「PayPay」や「楽天Pay」に相当するもので、スマートフォンのアプリを提示して支払いする決済方法です。

中央銀行通知により、非現金の決済手段が公に奨励される施策が進められていますので急速に広まった一万はあります。(「それでも現金決済はなくなりません!」参照)

どこでも使える中国のスマホ決済

既に中国人の日常生活に欠かせない決済手段となっていまして、飲食や移動、宿泊などあらゆる場面で使用することできます。個人経営の小さな食堂やお土産を売っている露店でも普通に使えます。都市や地方を問わず普及しています。逆に使えない所を探す方が難しくなってきています。

公共交通機関での使用も広がってきており、交通系ICカードを凌駕する勢いですが、スマホ決済の種類によっては、利便性に劣る部分があるため、まだこれからといった感じです。

爆発的普及の背景

事業者と利用者、両者の立場で考えるといかに早く普及したのかが分かります。

事業者としては、リーダーを導入する必要がなく、初期投資が不要でスマホ決済を導入できることが大きいのと、決済手数料がかからないといった優遇施策があるからです。運営会社は利用者の決済データをビジネスに活用する手法を採っているようです。

現地で個人事業者に中国語で直接聞いたところ、「手数料がかからないし、QRコードが印刷された紙があるだけで対応できる。」とのことで、この手軽さが爆発的な普及に繋がりました。専用の機器が必ずしも必要でないということが、中小店舗が導入する後押してなっています。

利用者側から見ますと、人民元で100元札の偽札が横行して多く出回っていたため、店舗や飲食店には必ず偽札をチェックする機器が置いてあるくらいでして、キャッシュレスであればそんな心配不要になるといった背景があります。

古い紙幣がしわくちゃになっていたり、破れていたりすることも日常茶飯事で、日本だったら銀行に回収されるレベルの紙幣が流通していて、財布にしまうのも躊躇してしまうくらいです。そのようなお札を飲料の自販機や地下鉄の券売機に入れても受け入れてくれません。現金を使うのが嫌になる気持ちが分かります。

これまではハードルが高かったスマホ決済

中国でのスマホ決済は、実現するまでのハードルが非常に高くて、外国人には敷居が高すぎて使える代物ではありませんでした。

決済アプリをダウンロードすること自体は簡単なのですが、使用するためにはチャージ(入金)が必要でして、スマホ決済を使っている友人から送金してもらったりするなど、困難がいくつもありました。

最近まで、現地でスマホ決済を使うためには、基本、中国で開設した銀行口座が必要でした。使用するサービスによっては、現地の携帯電話番号、ショートメッセージ(SMS)を受信できる環境が合わせて必要でした。SMSは中国語では短信といいます。銀行口座と携帯電話番号、SMS受信環境、これらを全て揃えるのはかなり骨折ることだったのです。

2019年に開設している銀行口座と紐づけて使用しましたが、その便利さに気づいて、日本ではまだ発展途上であったスマホ決済を使い始めたくらいでした。

ところが、中国では既にWechatPayやAliPayといったスマホ決済は人々の生活に浸透していることが月額利用額や使用割合を見れば分かるかと思います。

スマホ決済の月額利用額(日中比較)

中国人は現地での日常生活の中でどんな方法で決済しているのかについて銀聯国際が2021年5月に中国・日本などでインターネット調査した結果があります。

中国人は現金使用の頻度が著しく低いことが分かります。日本人の7分の1に過ぎません。1元=20円で計算すると142元という金額となりまして、月収の1割にもならない割合となります。

日本人は月20,000円を現金決済しているということで、キャッシュレスが普及していても現金はかなり使われていることを意味します。

銀聯国際 【日中比較】実店舗の支払で現金を月いくら使っているか?

スマホ決済の使用割合(日中比較)

低額、高額に関わらず中国人は使用されていて、日本ではコンビニで使用するといった低額決済メインであるという違いが明確に出ていました。

銀聯国際 【日中比較】金額規模別スマホ決済の使用割合

スマホ決済は「WechatPay」「AliPay」2強

スマホ決済は中国語で「第三方支付」(第3の決済手段)と称されており、2010年代のうちに着実に成長してきて、今や不動の地位を得ております。

決済の種類ですが、中国旅行で関係するのは「WechatPay」(微信・ウィーチャットペイ)、「Alipay」(支付宝・アリペイ)の2種類と考えて結構です。これらは中国人なら誰でも知っていて、知らない人はいないと言って過言はない圧倒的な知名度です。

中国で最も使われたキャッシュレス決済の種類

調査機関Statistaの市場調査によれば、アリペイは93%、ウィーチャットペイは86%で、ほとんどの人に浸透している決済手段として定着しています。銀聯カードがアリペイとウィーチャットペイに次ぎますが、43%と大きく離されています。実質的にこれら3種類が中国で最もメジャーな決済だと言えます。

中国のモバイル決済利用者数の推移ですが、2016年から2019年の3年で利用者が約1.5倍に増加しています。人数でいえば4.2億人から6.2億人への増加です。

出所:CNNIC(2019)「第44回中国インターネット発展状況統計報告」に基づきJETROが作成

2023年7月からクレカと連携したスマホ決済が可能に

スマホ決済アプリ「WeChatPay」や「AliPay」に日本のクレジットカードをアプリ内で登録することで、現地での支払が可能となりました。2023年7月に運営会社が相次いで発表しました。

コロナ禍になる前も登録自体は可能だったのですが、現地で登録した日本のクレジットカード情報を使い、決済としての利用ができませんでした。

実際に日本で使っているクレジットカードを登録してから、2023年9月にWeChatPayとAliPayを中国で使いましたが、登録したクレジットカードと紐づけされた状態で、普通に使うことができました。使ってみると大変便利です。

WechaPay

中国人が最も使うキャッシュレス決済のひとつが「WechatPay」(ウイチャットペイ・微信支付)です。旅先でこのロゴを見かけたことがある方もおおいのではないでしょうか。

WechatPayで日本人がクレジットカードと紐づける方法

2023年7月以降、日本のクレジットカード情報の登録が可能となりました。
登録方法は中国でキャッシュレス決済《WeChatPay》クレジットカード登録手順(2024)をご覧ください。

渡航先で使う方法を紹介した《WechatPay》クレカ登録後に中国で使用する方法(2024)でも解説していますので、ぜひご覧ください。

Wechat Pay(微信支付)ロゴ

実は、コロナ前にもクレジットカードの登録は可能でした。今回の措置と大きく異なることがありまして、中国での決済に対応していませんでした。

紐づけまではできても、どうしても現地で、日本のクレカを選択しても支払いができなかったのです。現地の銀行口座を持っていたので、それを紐づけて使っていたのが現状でした。

日本人が日常使っている決済手段と紐付することで、現地での買い物で決済できるようになったのは大きなインパクトでした。

Alipay

中国では2大キャッシュレス決済のひとつであります、「Alipay」(アリペイ・支付宝)があり、WechaPayと同様に広く使われています。大抵の中国人が知っています。

Alipay(支付宝)ロゴ

AliPayで日本人がクレジットカードと紐づける方法

アリペイも同様に2023年7月からクレジットカード情報の登録が可能となりました。興味がある方は「中国でキャッシュレス決済《Alipay》クレジットカード登録手順(2024)」を、現地での使い方については、「《AliPay》クレカ登録後に中国で使用する方法(2024)」をご覧ください。

決済が使えなくなるリスクに備える

スマホ決済には、バッテリー切れや盗難、エラーなど急に使えなくなる様々なリスクが生じます。詳しくは、中国で複数の決済手段を準備しリスクに備えるで対処法も解説していますのでご覧いただければと思います。

電子マネー(交通系ICカード)

SuicaやPASMOといった「交通系ICカード」は中国にもあります。北京では《北京市政交通一卡通》、上海は《上海公共交通卡》といった名称でカードが存在しています。

北京のカードは路線バスには割引があるため、10年以上前から使っておりまして、お勧めのカードです。地下鉄は割引へのハードルは高いため、旅行者では使えません。

どこまで普及しているの?

各都市にありますが、最近はスマホ決済に押されている感じがします。

最初はその都市の公共交通機関にだけ通用するICカードでしたが、近隣や遠方といった他の都市でも広く使用できる互換性が出てきているのが特徴です。

例を挙げますと、北京で購入した交通カードが天津や上海などの他の都市でも使えます。日本でいうSuicaが大阪や名古屋でも使えるのと同じです。

北京といった都市部ですと、交通系ICカードとスマホ決済でほぼ全てでして、現金を使用するのは地方から来た人など、かなり限定されているように見受けられました。

交通系ICカードの使い方

先ずはカードを有人窓口で入手します。次にチャージをするのですが、10元以上が多いのですが、事前にチャージしてからバスなどで使用するタッチ決済です。

北京市内にある交通ICカード窓口 2023年9月

無記名のものを現地購入が可能です。日本のようにバス車内でチャージすることはできず、窓口などチャージできる場所が限られますのでご注意を。

タッチの回数ですが、乗車時と後者時にタッチするパターンと乗車時のみタッチするパターンがあります。

体験談 ~北京市の交通カード~

北京の交通カード(交通卡)を2000年代から持っていまして、正式名称は「北京公交一卡通」カード使用でバス運賃が減額されるのでよく使っていました。2023年9月の旅行でも現役でした。

自分にとっては、クレジットカードに次ぐ、キャッシュレス決済の走りです。

北京市内で交通カード購入しました。氏名の登録は不要で、入手は簡単でした。残額が少なくなったら空港や市内の大きなバス停留所の窓口でチャージをしていました。

キャッシュカード(中国発行・日本発行)

中国の銀行が発行したキャッシュカード

中国本土で銀行口座を開設すれば必ず《銀聯》マークがついたキャッシュカードが発行されます。預けた人民元を出金・入金するときに使いますが、短期滞在者にとって現地で銀行口座を作ること自体難しいのが現状です。

ただ、体験談に記したとおりできない訳ではありません。手続的には土日も営業していて、日本の銀行よりも営業時間が長いので、チャンスはないわけではないと思います。

交通銀行 キャッシュカード
交通銀行 キャッシュカード 銀聯は標準装備

上の写真の右下に銀聯のロゴマークがありますが、どこの銀行でも口座開設して入手できるキャッシュカードは必ずこのロゴがあり、デビットカードとしても使えます。デビットカードについては次の項目で解説しています。

体験談 ~現地大手銀行口座を開設~

私は1990年代から2000年代にかけて現地で銀行口座を開設して、解約した口座もありますが、現在まで維持しています。旅行者であることを明示して、パスポートだけで開設しました。出金など窓口で手続きするときは必ずパスポートの提示を求められます。

2019年に初めての方向けに中国への体験旅行を企画して、参加者と一緒に陝西省北部へ行ったのですが、立ち寄った県クラスの町で、私がサポートして、参加者がパスポートだけで銀行口座を開設することに成功しました。

仮にうまく開設できた場合でも、インターネットバンキングをできるようにしてください。その際、トークンが必要な銀行は有効切れに注意してください。新型コロナ感染症流行の関係で、3年半以上中国へ行くことができなかった間に、トークンが有効期限切れで使えなくなってしまい、ログインができなくなりました。次、中国へ行ったときに新しいトークンを入手しなければなりませんでした。

パスポートで開設できる中国の銀行一覧

銀行が発行したキャッシュカードのうち、外国人が登録する際に紐づけすることができるカードの一覧のページがWeChatPay運営会社(腾讯)のカスタマーセンターWEBページ「境外用户如何完成微信支付实名认证?」にありました。

日本語訳ですが、直訳風にすれば「国外ユーザーがどのようにしてWeChatPayの実名認証を完成させるか?」です。

銀行口座がないとスマホ決済が対応できない話と関係しまして、現在でも、紐づけする手段の一つとなっていることから作成されたものと推察します。

「外国护照」(パスポート)とあるところに「✔」が入っている所は、外国人がパスポートを提示して銀行口座を開設できる。「×」は口座開設不可という意味です。

WeChatPayといったスマホ決済に紐づけできるキャッシュカード一覧という位置付けですが、別の見方をすれば、このリストは中国で銀行口座を開設したい人の参考になるデータとなります。どこの銀行なら外国人が口座を開設できるかというデータにもなります。

リストを見ますと外国人がパスポートで開設できる銀行はかなり多数あって、地方銀行にも及びます。ただ、情報としては対応できるとしても、実際に開設できるかどうかは窓口の対応次第ですのでご注意ください。

日本の銀行が発行したキャッシュカード

日本の一部銀行のキャッシュカードでは、中国を含めた海外のATMで出金可能なものがあります。口座の日本円残高から引き出す形となります。

クレジットカードと同様に、現金をキャッシングする手段、人民元を得るためのバックアップ手段として考えれば使えますが、盗難リスクがありますので、管理には十分注意してください。

デビットカード(銀聯カード)

銀聯カードって何?

《銀聯カード》(UnionPay・ぎんれん)は、中国で一番普及しているデビット機能があるカードです。20022年に中国政府が主導して設立された運営会社により中国全土の銀行オンライン化が行われまして、統一ブランドとしてつくられた由来があります。

2021年時点で全世界での発行枚数が90億枚を超えると言われていまして、世界中で使えるカードとなっています。クレジットカードは中国国内では普及していないことや、持ち出しできる外貨に制限があるため、その制限には入らないやり方として、銀聯カードで海外旅行先でキャッシングが利用されるようになりました。

クレジットカードとは異なり審査がないので、カードが作りやすいというメリットがあります。

また、日本のインバウンドで銀聯が広く使えるようになった背景には、上記の他、多額の現金を持ち歩かないようにしたいというニーズもありました。

銀行口座に紐づけられていて、銀行のキャッシュカード=銀聯カードです。デビットカード機能が付加されたと考えると分かりやすいです。使用したらその分即時に銀行口座の残高から引落されます。

以前は使える所が多かったが・・・

キャッシュカードの右下端には写真のロゴマークがカードにプリントされています。飲食店や店舗でも、スマホ決済と同様にこの表示がよく見かけられます。

銀聯(UnionPay)ロゴ

銀聯カードは中国国内のクレジットカードのような扱いです。銀聯カードは使えてクレジットカードが使えない店があっても、その逆はありません。

北京のコンビ二で「銀聯は使えないよ!」

2023年9月に中国へ旅行に行ったのですが、この銀聯が使えるところが減っているのではないかと肌で感じました。中国系でも大きなスーパーであれば使えたのですが、使えないと断られることが結構ありました。

北京のコンビニではローカル系ではほぼ使えませんでした。「7-11は使えるよ。」と現地の親切な若者に教えてもらいましたが、思った程使えない、限定されている感じがしました。

とはいうものの、中国国内で3,200万店舗に備えるPOS機で銀聯カードで決済でき、クレジットカードと比べ、まだまだ使える店はまだまだあって、銀聯カードが不要だというまでにはなってはおりませんが、先行きは明るくないのが現状と言えます。

日本で入手可能な銀聯カード

中国で銀行口座を開設しなければ銀聯カードは入手できないというイメージがあるかもしれませんが、実際は日本でも銀聯カードの発行が可能です。2007年から日本の企業や日本に支店がある中国の銀行と提携して発行が始まりました。

方式により2種類ある銀聯カード

  1. デビットカード方式
    本項目で紹介しているのですが、中国国内では銀聯カードはデビットカードという位置付けです。この方式で発行するのは中国の銀行です。
  2. クレジットカード方式
    デビットカードはあまり利用されない関係で、日本ではクレジットカードとして発行する方式が広まりました。発行会社別に紹介していますがいずれもこちらに該当します。
日本で発行可能な銀聯カード

インターネットショッピングは基本的にNGですが、現地の銀聯カードのロゴマークが表示されている店舗では使用可能です。

銀聯カード発行経験談

私も10年くらい前から銀聯カードを使用していますして、三井住友カードを通じて発行した銀聯カードを中国で使っています。

有効期限は5年で、クレジットカードと同じ後払い形式ですので、高額の決済に向いています。使い勝手や事務処理手数料が必要なのは日本のクレカと同じです。

クレジットカード方式の銀聯カード

こちらでは発行会社別にどのようなブランドの銀聯カードを発行しているのか紹介します。

三井住友カード

《三井住友銀聯カード》や《ANA銀聯カード》を発行しています。クレジットカードと同じように締切日があって、使用後に請求されるサービスです。デビットカード機能はなく、キャッシングはできませんので、クレジットカード的な扱いになります。

2023年11月現在、《三井住友銀聯カード》の申込は一時停止しています。12月下旬を目途に再開されるとのことです。《ANA銀聯カード》は申込可能です。

三井住友銀聯カード

親カード(クレジットカード)を保有している方の場合はオプションで追加発行する形態を採っています。単独で発行することも可能です。

ANA銀聯カード

クレジットカードのようにVポイントがつきますし、マイルへの移行も無料で出来ます。旅行前に1枚作っておいて損はありません。

三井住友銀聯カードを作る方法

知人の話ですと、「以前に解約して三井住友カード持っていなかったのですが、2023年9月にオンラインで申込みをして、1時間ですぐ送りますとメールがきた。」そうです。そこで、電話で窓口に発行について確認しました。

「三井住友銀聯カード」は三井住友カード会員でなくても作成可能です。WEBでの入力不備がなく、発送方法を書留を選択した場合は最短1週間後に自宅に届きます。

発送方法を特定記録を選択することをお勧めします。ポスト投函されるので、土日祝は届きません。急ぎの場合は、状況によりますが、次の窓口へ相談可能です。

三井住友カード
 発行案内デスク 06-6223-6628 年中無休10~17時
  担当部署直接なので話が早い
 入会案内デスク 0120-816-437 年中無休10~17時
  全般的な窓口なので取り次ぎとなります

九州カード

三井住友カードと連携して《九州銀聯カード》を発行しています。カードの内容は《三井住友銀聯カード》と変わりありません。

九州銀聯カード
三菱UFJニコス

《MUFG銀聯カード》はMUFGカード保有者限定で発行できます。ない場合は、MUFGカードの発行が必要です。提携先によっては発行できない場合があります。

海外利用時のポイントが2倍となります。キャッシングサービスが使えないのはは、他社発行の銀聯カードと同様です。

三菱UFJニコス銀聯カード
JAL

《JALアメリカンエキスプレスカード》の会員がオプションで取得できるもので、発行元が三菱UFJニコスですので、その内容は《MUFG銀聯カード》と変わりありません。

Trip.com

中国のオンライン旅行会社(OTA)Ctrip.comの外国版といえばいいのでしょうか、ホテル、航空券、列車の切符などをオンラインで販売していて、《Trip.comグローバルカード》を発行しています。

Trip.comグローバルカード

デビットカード方式の銀聯カード

中国銀行と中国建設銀行の東京支店を通じて発行することが可能です。

デビットカード方式の銀聯カード

現地での銀聯カード利用方法

中国国内で銀聯マークがあるお店で使うことできます。クレジットカードと同じような使い方です。

カードを提示して、金額を確認の上、暗証番号(00+最初に指定した4桁の数字)を入力して、実行キーのボタンを押してください。

店によっては暗証番号の入力が不要なケースがあります。

伝票が出力されますので、金額を改めて確認して、サインをしてください。

体験談 ~銀聯カードで決済~

コロナ前最後の旅行は2019年5月と9月なのですが、中国に着いた後、駅で列車の切符を買ったり、長距離バスターミナルでバスのチケットを購入するときに多用していました。

三井住友銀聯カードを持っておりまして、2019年5月の旅行では現地で消費した3万円のうち7割が銀聯カード使用でした。

比較的決済額が大きいものは特に意識して使っていますし、少額でも日本のクレジットカードと同様にポイントが貯まりますので、銀聯のロゴマークがあった場合は、現金を使わずに銀聯カードで決済していました。

河北省滦县駅の切符売場で、銀聯カードとアリペイ(支付宝)の決済が対応可能。[2017年5月]

クレジットカード(VISA・MASTER・JCB)

クレジットカードは中国語で「外卡」、「国际信用卡」と呼ばれています。国際ブランドのクレジットカードは中国ではあまり普及しておりません使える場所は残念ながら多くないのが現状です。

最初のトピックでクレジットカードは数字が延びておらず、普及は進んでいないことは明らかでしたが、その理由としては、加盟店が少なく中国人ユーザーに見向きもされなかったことや海外の決済システムを使うこと自体の抵抗感があったのではないかと推察されます。

ただ、2000年代の早い段階から既に使えるようにはなっていまして、決済端末と繋がるアナログ回線が繋がらなかったりして使えなかったことがよくあったのは懐かしい思い出話でした。

中国国内で使用できる場所

主に使える場所としては、外国人観光客やビジネス客が多い3星以上のハイクラスのホテルやデパート、外資系スーパー、国際空港などが挙げられます。

北京・上海・広州など省都クラスの大都市では外国人がよく来るレストランやバーなどの飲食店や国際空港の免税店で使えます。

ただ、コロナ禍の時期を経て、取扱い店舗数が減少しており、以前ほど使えなくなってきている現状があることには注意が必要です。

国際ブランドの種類

中国で使えるクレジットカードの種類は、日本で使われている主要国際ブランドのVISA、MASTER、JCB、AMEX、DINERS、DISCOVERと同じですが、なかでも中国国内で通用する範囲としてはVISA、MASTERが一歩先を行っています。決済件数が見過ごせないくらい増えた関係で、銀聯も国際ブランドに含まれるようになりました。

中国で使えるクレジットカード

実際に必要かと言いますと、そこまでの必要性は高くありません。使える場所が少ない、又は、ないというケースが現地でよく見られるからです。

しかし、高額決済となる3星以上のホテルでの宿泊代金支払いについては、クレカは使用可能であることがランクされるために必須であるため、現地で高額決済をされる場合は、バックアップ手段として持参するとよいでしょう。

事務手数料が必要

クレジットカードと銀聯カード共通なのですが、日本で発行したカードを中国を含めた海外で使用した場合は事務手数料が必要です。

例えば、三井住友カードの場合、VISA・MASTERカードは事務処理手数料率2.20%で、銀聯カードは2.50%です。カード決済時の為替レートに加算されたレートで現地利用額を掛け合わせる形で計算されます。(三井住友カード 海外でのご利用にあたって

体験談 ~クレカは1枚持参~

自分自身の例ですが、クレジットカードは必ず1枚持参しています。中国では24時間営業のATMは一般的で、比較的便利です。現金のキャッシングが可能で、元の現金を用意するバックアップ手段として活用できるのが持っていく理由です。

実際は手数料がかかったり、返済するプロセスがあるので、ATMでの出金は銀行口座のキャッシュカードを使っていました。

過去にJCBカードを使用していた時期があったのですが、その時は、事前に中国のJCB加盟店が紹介された冊子を事前に入手して参考にしていました。

体験談 ~ホテルのデポジット~

ホテル料金はどうしても決済額が高額となり、現金は100元札が最大であり、枚数が多くなるので出すのは大変です。

デポジットとして1泊~2泊程度の宿泊代金の支払いを求められることがあるのですが、クレジットカードが使えるホテルでしたら、現金の代わりに使うことができます。

実際に何度も使ったことがありますが、金額分の決済権があるという形でカードが切られますので、チェックアウトのときに、その伝票をフロントでスタッフに破ってもらうことを忘れないよう、毎回気を付けていました。

トラベラーズチェック

略してT/Cと称されていました。1990年代時点で存在してた旅行小切手で、銀行でドルや円のトラベラーズチェックを購入して、1ヶ所目にサイン。現地で使用する際に1ヶ所サインするもので、店舗によっては、そのまま使用できる場合がありました。

日本では2014年3月末に発行が終了してしまいましたので、今は使用することはできません。旅の遺産的なアイテムで、昔バックパッカーしていた人は知っていました。

体験談 ~昔はT/Cを使っていた~

1990年代、中国旅行を始めた最初の頃は、セキュリティ的な観点から、現金とともに、銀行で円のトラベラーズチェックを数万円用意して持っていき、現地でサインをして、人民元に換金していました。

支払方法別の使用難易度 in 中国

中国で支払いするときの手段は多数ありますので、独自に難易度別で表現しました。
これまでは外国人として使用する側という立場を中心にとらえていましたが、現地の人がどの程度使用しているかという普及度を考慮したものに変更したため、難易度が変化しました。「低(←高)」の()部分は旧評価です。
これを念頭に置きながら各項目をご覧いただければと思います。

決済手段別使用難易度一覧

  • スマホ決済【使用難易度:中】(←高)
  • 現金(人民元)【使用難易度:中】(←低)
  • キャッシュカード【使用難易度:高】(←高)
  • 電子マネー(交通系ICカード)【使用難易度:中】(←低)
  • クレジットカード【使用難易度:中】(←低)
  • デビットカード(銀聯カード)【使用難易度:中】(←中)
  • トラベラーズチェック【使用難易度:不可】

「使用難易度」解説

「低」 何も考えなくても、現地で支払いが実現できるポピュラーな決済手段。中国人の大半が使用している。

「中」 手間はかかりますが、必要な手順を経れば実現できる決済手段。中国人の認知度は高いが、実際に使えるところは限られていたりするなど、何か問題がある。

「高」 ハードルがあり、それをクリアしなければ実現できない決済手段。中国人はほぼ使用していないため、外国人が来る場所でないと使えない。

「不可」 既に使用できないものですが、過去はこんなものもあったんだということであえて付け加えました。

中国での決済に関する大きな動き

中国での決済事情関係で、今年最も大きな動きがあったのは、2023年7月からスマホ決済の大手「Alipay(支付宝)」と「WeChatPay(微信支付)」は海外のクレジットカードの登録が可能となったことです。それまでは、銀行口座がなければチャージすらできず、残高が0であるため、スマホ決済での支払いがままならなかった状態でした。それがこの動きにより大きく改善し、日本人を含めた外国人は中国でキャッシュレス決済の使い勝手の良さを享受できるようになりました。

コロナ後の中国の決済手段の大きな変化

4年ぶりに中国旅行が2023年9月に実現しました。コロナ前からキャッシュレスの傾向があったことは、前回訪問時の2019年9月にも実感しましたが、今回の訪問でAlipayやWeChatPay完全に定着していることを身をもって体感しました。他の決済方法についても変化を感じたことがありましたので、そういった状況を記事に反映させました。

複数の決済手段を準備し決済できないリスクに備え

WechatPayやAliPayが急に使えなくなるリスクが結構あることやクレジットカードや銀聯決済に対応していないなど、ひとつの決済手段で対応できないリスクが高まっており、それに対応する必要があります。

他の決済手段によるバックアップが必要な場面は多い

スマートフォンはQRコードを使ったキャッシュレス決済ができる便利なツールですが、次の例のように様々なトラブルが起こることが想定されます。

スマホ決済が急に使えなくなるケース例

  • データ通信回線が不調で決済アプリが使えない
  • 電池切れでスマホが使えない
  • 盗難や紛失によりスマホが手元になくなる
  • スマホの指紋認証や顔認証が急にできなくなった
  • 原因不明でアプリで決済することができない
  • 決済アプリ運営者によりセキュリティロックされた

日本で生活している時のことを考えてもらうとより分かりやすいです。助けてくれる家族や友人への連絡手段が複数あったり、銀行のキャッシュカードを財布に入れてあったりするなど、バックアップ手段はかなり充実していますが、それら全てを中国へ持ち込むことは物理的にできません。

また、日本にいる時とは異なり、故障するリスクやソフト的に使えなくなるリスクなどが高くなり、それらに対していかに対応ができるかどうかがポイントとなります。

旅先、特に中国など海外では、使うことが可能な手段がどうしても限られてしまいますので、可能な限り、次に挙げるバックアップ手段を出発前に準備しておくことをお勧めします。

スマホ決済以外のバックアップとして使える決済手段

  • 現金(人民元・日本円)
  • 銀聯カード
  • クレジットカード
  • 海外対応キャッシュカード
  • 人民元口座

キャッシュレス決済以外のバックアップ手段

覚えておいてほしいのは、これら単体で考えますと、万能ではないこと。予備の決済手段として用意するのであれば、複数を考えるべきだと思います。

人民元現金

現金の肩身が狭くなってきているとはいえ、使用範囲が最も広いという大きなメリットは今でも健在です。100元札までしかないため、決済額が高いとお札の枚数が必要となり、盗難や紛失のリスクが生じます。
私の場合は、前回旅行の残りを次回に使えるように中国元を残して、中国に到着後、現金が必要になっても慌てないようにしています。

銀聯カード

中国では銀行口座のキャッシュカードとして使われているので保有率は抜群に高いですが、コロナ禍を経て決済端末が大幅に減少中です。
とはいえ、現地の銀行口座がなくても、日本のクレジットカード会社が発行している銀聯カードを用意すれば、スマホ決済に代わるキャッシュレス決済として活用可能です。

クレジットカード

中国では2000年代前半でも使えたのですが、広く普及しませんでした。
使用できる場所は銀聯カードよりも限定されますが、ホテルでの宿泊代金支払いなど、高額決済の時に持っていると便利な決済手段です。

日本円

中国元に交換できる外貨です。米ドルに交換するまでではありません。
交換できる銀行や支店は限られ、米ドルよりは少ないですが、両替ができる店舗は都市部では多数ありますし、地方の県クラスの町でも1件は必ずあります。数日の滞在であれば、数万円を持っているだけでも安心です。

日本の銀行口座キャッシュカード

中国など外国で出金できる海外対応の銀行のキャッシュカードがあれば、デビットカードではありませんが、手数料はそれなりにしますが、現地通貨での引き出しが可能となります。中国の人民元が必要となった時の救済手段となります。

中国元の銀行口座&キャッシュカード

取得難易度は高いのですが、中国語会話又は英会話ができて、親切な窓口スタッフに当たるかどうか次第で、元口座が開設できるかどうかが決まると言って過言はありません。筆談によるチャレンジも可能です。

2019年秋に企画体験旅行に行った際、体験プログラムの一環で、陝西省北部の県クラスの町の大手銀行支店で参加者複数名が希望した銀行口座開設をサポートしました。

結局、中国ではどの決済手段を選ぶべきか?

結論を端的に言いますと、決済手段を一つだけ選ぶことは正直、難しいです。
比較できるように表にまとめました。決済方法にそれぞれ特徴がありますが、得手不得手があり、残念ながらひとつだけで万能だというものは存在しません。

中国で使える決済手段の総合比較表

メインはスマホ決済にして、それ以外の現金やクレカをチョイスするといった、経験上、二つ以上の決済手段を持っていくことが望ましいやり方の例です。

ボリュームがかなりの量となりますが、それぞれの決済手段について詳細を別項で解説しました。何を選択するかをイメージしながらご覧いただき、ここをご覧になるという見方もひとつだと思います。

バックアップの決済手段準備のすすめ

旅行や仕事で行くとき、手持ちの現金はどうしても限られておりますし、預金を直接引き出せる訳ではありません。決済トラブルが散発しています。

ひとつの決済手段だけでは、リスクが大きいので、別の決済手段を備えることで、ある程度リスクが軽減され、安心できるレベルまで上げることできますので、取り組んでみてはいかがでしょうか?

中国滞在中の決済手段 組み合わせ実例

通信環境を確保できるのであれば、「キャッシュレス決済だけで旅行ができるようになりました。」と言いたいのですが、スマホ決済だけにすれば、電池切れや故障、盗難といったセキュリティリスクがあり、不安がどうしてもぬぐえません。

「本当にこれだけの種類必要なのか?」と思われるかもしれせん。バックアップを兼ねている手段も含まれています。このあたりは旅をする皆さんの考え方次第で変わるのではないでしょうか。

実際、2023年9月、中国現地ではどのような決済手段で構成していたかといいますと、最も主力だったのは「スマホ決済」でした。ただ、到着直後から最初の3日間は、問題が判明してデータ通信が使えなかったことで全く使えず、「現金」と「電子マネー」(北京市の交通カード)のみで過ごしました。

コロナ後最初の旅行時の決済方法

2023年9月訪問時に私が実際に用意した決済手段は次のリストです。

  • スマホ決済(AliPay・WechatPay)
  • 現金(人民元)
  • デビットカード(銀聯カード)
  • キャッシュカード(中国大手銀行)
  • 電子マネー(交通系ICカード)
  • クレジットカード(VISAカード)

結果ですが、データ通信環境が回復してからは、ほぼ100%決済がAliPayとWechatPayでした。この便利さに慣れますとやめられませんでしたが、セキュリティエラーが出てしまい、万全ではなかったという実績が教訓として得られました。

「デビットカード」は、三井住友銀聯カードのことですが、列車の切符といった数十元から100元を超える運賃の決済に使いましたが、頻度は高くありませんでした。

「クレジットカード」は全く使いませんでした。元々、使うつもりはなかったのですが、片道航空券を急きょ買わないといけないときのバックアップ的なものとして想定していました。

質問は遠慮なくどうぞ!

旅行や仕事など中国へ行くときに、支払い手段をどうすればよいか、バックアップ手段はどうすればよいかなど、皆さんのスタンスで決める際に、迷うことがあるかもしれません。
そういった時に、何かお役に立つことができればと思います。質問は随時受け付けていますので、お気軽にしてください。

画面の貼付がある場合は、メールのアイコンをクリックして、メールで送付いただけるとありがたいです。

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これまでブログでアップした旅の費用に関連するコラムが多数ありますので紹介します。特に、中国旅行の費用面で自身の経験を踏まえて投稿しました。バックパック旅行が得意です。興味がありましたら併せてご覧ください。

最後に

これまでのブログ記事のなかで最も長文になりましたが、いかがでしたでしょうか?全部読まれるのは大変なので、興味ある所だけでも読んでいただければ嬉しく思います。

キャッシュレは使えますが、使うまでが一苦労です。それはどういうことなのでしょうか。各所でリンクしている関連コラムもお読みいただき、全体で旅行前の準備にお役立てください。

作者プロフィール

旅人@中国旅行一筋30年
旅人@中国旅行一筋30年ブログサイト「中国旅行ドットコム」運営者
1991年から30年間で70回以上の中国訪問を経験するベテラン旅行ブロガー、新型コロナウイルス後の中国旅行に対応した最新情報から、大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。

【旅の実績】 訪問した省・市・自治区:32(残1) 訪問地:200以上 印象に残る旅のエピソード:数え切れず

安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。

1日100元以内で旅をするなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。

中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」の運営者。

ブログをご覧になられた読者との交流も大切にしており、ほぼ毎日質問やお便りがきて、集まった情報をブログや動画に反映している。

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