北京・上海-香港間を寝台”高鉄”で翌朝到着

中国では高速鉄道(高鉄)を利用すればベッドに横になって快適に早く夜行移動が可能で、北京や上海から香港への大都市間アクセスが一層便利になりました。

中国ではまだまだ現役といいますか、リクライニングシートではなくベッドで移動できる鉄道があることはあまり知られていません。

中国では”高鉄”と呼ばれる高速鉄道が縦横無尽に路線網を広げているなかで、深夜移動の一般的な客車列車は往年の日本を思い起こせるような寝台列車はまだまだ現役で、私も旅先で幾度も利用しています。

D909寝台車内(新華社撮影)

これが、高速鉄道が寝台列車になってしまったのです。要は、新幹線の全車両に寝台車を設置するイメージです。

そこで、日本の現況をまとめつつ、中国の寝台での移動はまだまだ現役な状況をレポートします。鉄道旅行するために中国へ行くのも今であればひとつの旅のスタイルかもしれません。

日本の寝台列車は寂しい限り・・・

日本では往年の寝台列車が全国各地を走っていた時代ははるか前に終わり、定期運航している寝台列車はサンライズ瀬戸・出雲のみなりました。

高速バスに新風!高知発寝台バス

国土交通省がガイドラインを2024年11月に発表された後、最初に適用されたバスになりますが、2025年2月、高知駅前観光が日本初のバス専用フルフラットシート使用の夜行バスが登場しました。

高地さんさんテレビ「日本初!横になれる「フルフラット」高速バスが高知で誕生」の動画で分かりやすく紹介されています。

高知さんさんテレビ 取材動画

動画では「移動するカプセルホテル」と称されていました。運行は同年3月から週1回の運行が始まり、秋からは14,000円程度(座席は10,000円前後)で本格的に運行されます。

年内に同型バスが6台生産される予定など、まだまだ始まったばかりの段階ですが、今後は横になって移動する機会が増えてくるでしょう。

では中国の寝台列車って?

一方、中国はどうなのでしょうか? 寝台列車は飛行機や長距離バスと並ぶ長距離移動手段のひとつです。

1990年~2000年代は一般列車とバスが長距離移動の主役で、3,000km以上の距離を1台のバスが走っていたくらいです。

今は大きく変わり、飛行機はもちろんですが、列車は高速化して高速列車や一般列車に主役を譲ってしまったのが現状です。

20年前に寝台バスは中国で存在していた!

日本ではやっと最近動き出したひよっこ段階ですが、中国では2000年に入ってから既にフルフラットなベッド、又は、180度に近いシート仕様の長距離バスが多数走っていました。そんな頃より更に10年前から中国各地を旅している作者。寝台バスの写真を披露します。

2段となっていて写真は下段ですが、リクライニングの角度はかなり深いです。

寝台バス移動体験談

旅行日程を効率的にできるので、数えきれないくらい夜行移動していますが、寝台バスも幾度も乗ってきました。そのうち2006年7月に乗車した時の様子を旅行記にしています。
避暑を目指して ~中国河南旅行記~
「4日目 郭亮村で避暑&夜行寝台バス」に紹介していますが、シート幅や3列で2段寝台の仕様は今の日本のガイドラインと変わりません。

当時は安全対策が不足?

残念ながら、日本のガイドラインのような安全対策はないように見受けられました。見た目は頑丈そうですが、実際のところ、衝撃にはどうなのか試験していたのかなど分かりません。

当時、結構事故が起こったりしていました。これは寝台バスというよりは、該当が少ない、道路に穴があいているなど、道路事情によるものが大きかったと思います。

深夜フライトは消失?

飛行機での移動は深夜便はコロナ前はありましたが、深夜2時台に到着するフライトはありますが、夜遅く出て早朝着く便はなくなり、国際線のみとなりました。

現在では、チケットを購入して同じ航空会社で翌朝乗り継ぐ場合に、無料ホテルサービスを用意しているケースが多数あります。

高速鉄道が深夜移動の主役

深夜移動の主役は中国語で”高鉄”と呼ばれている高速鉄道です。

列車の運賃がバスよりも高かった2000年代、寝台列車に乗るのは高嶺の花といった時期がありましたが、バス運賃の値上げが相次ぎ、列車での長距離移動の方が強くなってきました。

2000年以降、幾度もの列車の高速化が行われました。2010年代以降は”高鉄”と呼ばれる高速鉄道網が急速に整備されました。

香港への高速寝台列車開通

2024年6月15日、中国の北京西駅・上海虹橋駅と香港西九龍駅を寝台車を連結する最初の高速列車の運行が始まりました。

一般鉄道でも同区間の運行はありましたが、客車列車(Z列車)で所要時間24時間だったのが、高速鉄道では半分の12時間でアクセスできるようになりました。運賃は倍以上になりました。

D909発列車を祝う横断幕(新華社撮影)

高速鉄道を中国語では「高鉄」といいますが、簡単に言えば新幹線のような列車でして、寝台車で運行している区間は北京-上海など一部区間に限られています。

特徴として、途中停車駅が上りと下りで異なることです。日本の鉄道ではあまり見られない傾向ですが、高速バスですとこのような場合があります。

2025年2月現在の運行情報を紹介します。毎日運航ではないことに注意が必要です。

運行当初との比較

更には2024年10月1日にもダイヤ改正がありました。0D列車からG列車にランクアップしたため運賃が上がりました。所要時間は差ほど変わりません。大きな違いは、同区間を走る昼行列車が増発され毎日運行となっています。

2025年2月 北京西-香港西九龍

運行日 : 月金土日発

運賃 : 二等座 936元 特等座 1,011元 動臥 1,150元 

G897 北京西 20:13発 石家庄 21:38発 邯鄲東 22:23発 鄭州東 23:29発 広州南 6:07着 深圳北 6:45着 香港西九龍 7:12着

G898 香港西九龍 20:25発 深圳北 20:47発 広州南 21:22発 長沙南 23:36発 石家庄 5:20着 北京西 6:53着

所要時間   10時間28分

(参考)2024年6月 北京西-香港西九龍

運行日 : 月金土日発

運賃 : 二等座(硬座相当)854元 動臥(軟臥相当) 1170元 

D909 北京西 20:13発 香港西九龍 8:47着 12時間34分
停車駅:石家庄、邯鄲東、鄭州東、広州、東莞南、深圳北

D910 香港西九龍 18:24発 北京西 6:53着 12時間29分 
停車駅:東莞南、広州、長沙南、石家庄

2025年2月 上海虹橋-香港西九龍

運行日 月金土日発

運賃  二等座 692元 特等座 763元 動臥(軟臥) 890元

列車名 
G899 上海虹橋 20:15発 杭州東 21:15発 寧波 22:13発 深圳北 6:42着 香港西九龍 7:24着

G899 香港西九龍 20:05発 深圳北 20:41発 潮汕 22:18発 厦門北 23:32発 寧波 4:29着 杭州東 6:10着 上海虹橋 7:00着  

所要時間 11時間9分 / 11時間5分

(参考)2024年6月 上海虹橋-香港西九龍

運行日 月金土日発

運賃  二等座(硬座相当)622元 動臥(軟臥相当) 800元 高級軟臥 1470元

D907 上海虹橋 20:15発 香港西九龍 7:29着 11時間24分 
停車駅 広州東、深圳北

D908 香港西九龍 19:49発 上海虹橋 6:45着 10時間56分
停車駅 深圳北、潮汕、厦門北、広州東

中国鉄道12036「上海-香港西九龍」

初列車の光景

新華社発ですが、笑顔で映っている乗客を多数いらっしゃる様子、ここにはありませんが記念の枠を持ちながら撮影している様子など嬉しそうな光景が見受けられます。

D909乗車客が記念撮影(新華社撮影)

運行は始まった直後の様子を記した中国語記事です。

夕发朝至!京港、沪港间开行高铁动卧列车
https://www.163.com/dy/article/J4PU8HDA0514R9P4.html

「夕发朝至」は「夕方発翌朝着」、「高铁动卧列车」は「高速鉄道寝台列車」という意味で、「京港」、「沪港」は、「北京-香港」、「上海-香港」という意味です。

航空機 対 鉄道

20年以上前から北京と上海から香港を結ぶ国際列車に相当する列車が運行されていました。電気機関車に客車をけん引したものですが、ダイヤ的には所要時間は翌朝到着するくらいの速さはありませんでした。

航空券と比較すると競争力がないかと言えばそうではないと言えます。空港使用料90元、空港への往復交通費、待ち時間などを考えますと、夕方に出て翌朝に着くという日程の移動であれば、悪くないのではないでしょうか。

旅のポイント ~高鉄の活用~

高速列車は寝台に限らなければ、夜行移動できる区間は多数ありまして、日本の新幹線と最も大きな違いがある部分です。

運賃は確かに高いものの、今時のホテルは1泊数百元するのは当たり前ですので、宿泊費と移動費の合計だけを考えても効率的な日程が組めます。

本来、上海往復なのが、往路は香港へ向かい、復路は上海から帰国といった組み合わせをすることが可能です。

まとめ

中国の高速鉄道での夜行移動は一般化しています。次のような特徴があります。

  • 日本は衰退した寝台移動は中国ではまだまだ現役
  • アメリカと同程度の広さがある中国で高速列車は有用
  • 運賃はそれなりだが日程の組み方次第では効率的

短期滞在ではビザ取得が不要となった中国。移動方法があります。中国を知ったり、楽しんだりする手段として使ってみてはいかがでしょうか。話のネタにもなりますよ。

作者プロフィール

旅人@中国旅行一筋30年
旅人@中国旅行一筋30年ブログサイト「中国旅行ドットコム」運営者
1991年から30年間で70回以上の中国訪問歴を有するベテラン旅行ブロガー。

中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営。

大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。

【個人旅の実績】 訪問した省・市・自治区:32(残1) 訪問地:200以上
【印象に残る旅のエピソード】 数え切れず
【撮影した写真】 45,000点以上

安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。

1日100元以内での滞在に挑戦するなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、海外モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。

旅先での中国語会話を実践して、通じる中国語を教えることにも取り組んでいる。中国語に堪能でVIP通訳に従事したことがあり、訪日視察団のアテンドをしたことも。経験を活かして、コミュニケーション促進のための中国語も含め講師として教えて6年超。

ブログをご覧になられた読者との交流も大切にしており、いただいた質問に対応したり、いただいた情報をブログや動画に反映している。

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