中国人が使用する日常的な決済手段は何?

日常生活で中国人が使う決済手段が形成されるまでの経緯について概略説明を始め、2010年代以降の決済手段推移やスマホ決済が普及する背景、日本人と中国人の比較でスマホ決済の使用傾向を統計数値を使用しながら解説します。

キャッシュレス決済の中国での位置付けがコロナ禍による大きく変化や中国人の消費傾向をひも解きつつ、世界のクレジットカード取引割合など各種統計数字を織り交ぜて背景説明も行います。

中国での決済手段の進化

2010年代前半までは、中国では現金以外の決済手段といえばキャッシュカードに標準で付いてくる銀聯カードでした。クレジットカードは古くからあったのですが、審査が必要なことは加盟店が少ないため、海外旅行での使用を除いては、中国国内では浸透しませんでした。

ところが、2010年代後半になりますと、4G対応やスマートフォンの普及などモバイル通信の発展によりスマホ決済が登場することで、中国人の日常生活での決済手段が大きく変化しました。

4G及び5Gの普及

ここから背景説明に入ります。年々通信速度が増加していて、スマートフォンを使ってデータ通信するのが日本と同様に中国でも当たり前の世の中になりました。2017年時点で基地局の半分は4G、2022年は6割は4G、2割は5Gとなっています。

中国における4G・5G基地局設置状況
中華人民共和国工業和信息化部「2022年通信业统计公报」

携帯電話の普及は頭打ち

携帯電話は2014年時点で94.5%でしたが、2017年には100%を超えて、2台持ちも含めて全員持っているくらいの数量となっています。

携帯電話普及率推移
中華人民共和国工業和信息化部「2022年通信业统计公报」

移動データ通信とスマホ決済

2015年~2017年までの増加率(折れ線グラフ)はそれぞれ27.2%、38.3%、27.6%の増加がありましたがモバイルデータ通信が広まった裏付けとも言えます。その後は数値的には落ち着いている状況の中、前記のように5G基地局が増加し、通信環境の改善が進んでいます。

中国における移動データ通信収入状況
中華人民共和国工業和信息化部「2020年通信业统计公报」「2022年通信业统计公报」

このような通信綿でのハードが整ってきたことはスマホ決済が普及したことと大きく関係すると言えるのではないかと思います。

現金以外の支払手段の決済割合

急成長を遂げる前の2014年のカードに絞った支払手段のシェアの数字を見ていただきますと、銀聯は57%、VISAカードは30%、MASTERカードは11%、AmericanExpressは2%、海外勢は合わせて43%と追い抜かれていましたが、それなりの割合はありました。

2010年代後半にキャッシュレス決済登場

2013年から2015年まではモバイル決済(スマホ決済)の普及率はライバル視できないくらいの小さい数字でしたが、2016年には4分の1に伸長し、それ以降はグラフを見て分かるように急成長をとげました。

上昇幅を見ますと、2016年と2017年のモバイル決済の伸びが著しいのは、前記の移動データ通信収入の大幅増とリンクしてる側面があるかと推察しています。

コロナ拡大前の2019年には6割近くをモバイル決済が占めていました。クレジットカードは6年間、伸びが全然見られませんでした。

中国における現金以外の決済手段の普及状況

スマホ決済が爆発的普及した背景

事業者と利用者、両者の立場で考えるといかに早く普及したのかが分かります。

事業者としては、リーダーを導入する必要がなく、初期投資が不要でスマホ決済を導入できることが大きいのと、決済手数料がかからないといった優遇施策があるからです。運営会社は利用者の決済データをビジネスに活用する手法を採っているようです。

現地で個人事業者に中国語で直接聞いたところ、「手数料がかからないし、QRコードが印刷された紙があるだけで対応できる。」とのことで、この手軽さが爆発的な普及に繋がりました。専用の機器が必ずしも必要でないということが、中小店舗が導入する後押してなっています。

利用者側から見ますと、人民元で100元札の偽札が横行して多く出回っていたため、店舗や飲食店には必ず偽札をチェックする機器が置いてあるくらいでして、キャッシュレスであればそんな心配不要になるといった背景があります。

古い紙幣がしわくちゃになっていたり、破れていたりすることも日常茶飯事で、日本だったら銀行に回収されるレベルの紙幣が流通していて、財布にしまうのも躊躇してしまうくらいです。そのようなお札を飲料の自販機や地下鉄の券売機に入れても受け入れてくれません。現金を使うのが嫌になる気持ちが分かります。

スマホ決済の月額利用額(日中比較)

中国人は現地での日常生活の中でどんな方法で決済しているのかについて銀聯国際が2021年5月に中国・日本などでインターネット調査した結果があります。

中国人は現金使用の頻度が著しく低いことが分かります。日本人の7分の1に過ぎません。1元=20円で計算すると142元という金額となりまして、月収の1割にもならない割合となります。

日本人は月20,000円を現金決済しているということで、キャッシュレスが普及していても現金はかなり使われていることを意味します。

銀聯国際 【日中比較】実店舗の支払で現金を月いくら使っているか?

スマホ決済の使用割合(日中比較)

低額、高額に関わらず中国人は使用されていて、日本ではコンビニで使用するといった低額決済メインであるという違いが明確に出ていました。

銀聯国際 【日中比較】金額規模別スマホ決済の使用割合

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作者プロフィール

旅人@中国旅行一筋30年
旅人@中国旅行一筋30年ブログサイト「中国旅行ドットコム」運営者
1991年から30年間で70回以上の中国訪問歴を有するベテラン旅行ブロガー。

中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営。

新型コロナウイルス後の中国旅行に対応した最新情報から、大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。

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安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。

1日100元以内での滞在に挑戦するなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、海外モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。

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