40以上も存在する地下鉄がある中国の都市
個人で中国旅行に行く場合、地下鉄など都市交通機関を利用すると大変便利で、市内を早く確実に移動するのに適しています。運行遅延は路線バスなど他の交通機関よりは少ないです。
省都クラスの都市だけでなく、地方の中心都市も含めて、中国で40以上の都市に地下鉄(都市交通)が開通しています。
特定の場所へできる限り早く行きたいとき、上海は空港から市街地まで50キロあるため、バスよりも早くて、時間が読みやすい、比較的リーズナブルな地下鉄を利用しています。
大都市ですと路線数が多いがゆえに乗換えが多いので、それだけで時間がかかることには注意が必要です。
隣接都市間を結ぶ広域交通ネットワークに発展
中国では「省」、「市」、「区・県・市」という各級(レベル)で行政区域が分けられています。
北京や上海、天津、重慶は「省」クラスですが、南京、瀋陽、成都など、地下鉄がある他の都市は省より下の「市」クラスです。
「市」の中には、都心部は「区」があり、郊外にあたる周辺部は規模が大きいところは「市」、小さい所は「県」になります。後者の市は「市中市」と呼ばれています。
2023年6月に上海市と蘇州市を結ぶ約40kmの地下鉄が開通しました。リンク先の記事で詳しく紹介しています。
蘇州市は江蘇省にありますので、省を跨る地下鉄で、日本で言えば、東京都と神奈川県を結ぶ中国初の地下鉄が誕生したということになります。
厳密に言いますと、蘇州市には昆山市という市中市があり、昆山を経由して上海と蘇州が繋がりました。
他にも同様な動きがありまして、江蘇省南京市から東隣にある鎮江市句容市(市クラス)を結ぶ地下鉄は開通済ですし、南京から安徽省馬鞍山市や省内の揚州市などを結ぶ路線の工事が着工されました。
日本ですと公共交通で市外へ延伸するとなると税金の投入先に疑問を持たれるのかもしれませんが、中国では隣の都市へ地下鉄路線を開通させることに抵抗感はないようで、積極的に路線網を拡張しており、広域での発展を目指していることが読み取れます。
中国初の地下鉄は北京
北京は中国で一番最初に地下鉄が開通した都市で、長安街という目抜き通りの両端の城門辺りから郊外向かって東西に路線(1号線)ができて、後に天安門や王府井が開通したため東西1本の直通路線になりました。そして、城壁の下に環状線(2号線)が開通して、初期の地下鉄路線が構成されました。
その後、郊外や中心部への路線が加速度的に増えて、25路線を超えるまでとなりました。その中には、首都空港や大興空港への路線も含まれております。
北京城市軌道交通線網図(北京地鉄) 拡大表示可能
公式サイトの路線図ですが、中国語では「都市軌道交通」と称しております。日本でも地下鉄路線の末端部分が高架となっていますが、そういった路線もあり、中国語で通称は「地鉄」と呼ばれていますが、正式には「軌道交通」となります。
中国の地下鉄等都市交通開通状況
では、北京以外は中国のどこに地下鉄があるかということですが、1990年代では、上海や天津、広州の4都市でしたが、2004年に深圳を皮切りに、続々と開通しております。
~2004年開通 【4都市】
北京、上海、広州、天津
2005年~2010年開通 【4都市 累計:8都市】
南京、瀋陽、成都、佛山(広東省)
2011年~2015年開通 【14都市 累計:22都市】
重慶、西安、蘇州、昆明、杭州、武漢、哈爾浜(ハルビン)、鄭州(河南省)、長沙(湖南省)、寧波(浙江省)、無錫、大連、青島、南昌(江西省)
2016年~2020年開通 【16都市 累計:38都市】
福州、東莞(広東省)、南寧(広西壮族自治区)、合肥(安徽省)、石家庄、長春、貴陽、厦門、烏魯木斉、温州(浙江省)、済南、蘭州、常州(江蘇省)、徐州(江蘇省)、呼和浩特、太原(山西省)
2021年~2023年開通 【4都市 累計:42都市】
洛陽(河南省)、紹興(浙江省)、蕪湖(安徽省)、南通(江蘇省)
最新は江蘇省の南通で2022年11月開通です。
省別ですと、江蘇省が6都市で最多、広東省&浙江省の4都市で沿岸部の省が多いのが特徴で、2都市は河南、山東、遼寧、安徽、福建で、他の省・自治区は1都市です。
開通都市を見る限り、中国省(区)都で開通していないのは、西寧、銀川、拉薩の3都市になってしまいました。地下鉄の発展は2010年代の高速鉄道網の発展した時期とも似ています。
今後の開通計画
新しく開通を計画しているの都市ですが、寧波(浙江省)や温州(浙江省)が挙げられます。何れもまだ計画段階です。
各都市の都市交通の総延長と路線数
次の表は現地メディアが報じた中国での2022年12月末現在の地下鉄等の都市軌道交通の開通状況一覧です。
2022年12月末現在 中国都市軌道開通状況
(出典:界面新闻 「2022年全国43城地铁数据出炉,哪个城市人均乘车里程最长?」)
中国語で記載なので補足しますが、《里程》は総延長(km)、《线路条数》は路線数です。総延長でトップは上海で825km、2位は北京727.3km、3位は広州609.8kmと続きます。
世界で見ても上海の地下鉄網は世界最大規模で、歴史ではイギリスのロンドンですが、規模は中国の各都市となります。
中国の都市交通の特徴
開通して間もない都市は、1路線しかないですが、年月を経るにつれて、路線数が増加するのが定番で、開通してから長い歴史がある北京や上海は20以上の路線が、郊外の区まで延びています。
日本と同様に大都市は地下鉄中心で、郊外は地上に出る区間がある場合が多く、それ以外は地下鉄以外の地上交通の場合があります。
空港-市内のアクセスとしての地下鉄
地下鉄が空港と結ばれている都市が増えています。北京、上海、広州、西安、南京など多数あります。
最初の開通直後は中心部のみになりますが、郊外まで延びる時に利便性を考慮して、空港まで建設するケースが多いです。
広州は最初は空港までの路線はなかったのですが、郊外の花都区まで延びて中心部と空港と直結しました。
中国語の「城軌」とは?
先の表の中国語タイトルで「城軌」とありますが、これは「城市軌道交通」を省略したものです。
日本で言えば、東京、大阪、名古屋などにある「地下鉄」、札幌や京都、堺、広島、松山などにある「路面電車」、羽田空港や湘南の「モノレール」、富山や宇都宮の「ライトレール」(LRT)など、都市に存在する軌道系(専門用語で鉄軌道)交通機関を指す総称です。
リストを見る際に気を付けないといけないのは、狭義の「地下鉄」はその中の限られた部分であるということです。
できる限り、地下鉄が含まれている「城軌」を紹介することに主眼においていますが、日本よりも軌道交通の種類が多いため、読み取りには注意が必要です。
日本の都市交通との比較
日本では、地下鉄は人口100万人以上の政令指定都市クラスでないと存在しませんが、規模の比較をしてみましょう。
日本の地下鉄と比較しますと、東京メトロが195.0km、都営地下鉄は109.0km、これらを東京とすれば304kmとなりますが、10位青島(チンタオ)323.8km、11位天津286.0kmの間となります。
大阪メトロは137.8kmで20位昆明と21位南昌の間、名古屋市営地下鉄は93.3kmで、27位厦門と28位済南の間にあります。
新しい路線建設計画は東京の品川など限られた路線しかありませんが、中国の各都市ではまだまだ建設中や計画されている路線は無数にあり、各都市の交通機関の発展状況は目を見張る限りです。
旅先での地下鉄に関する想い出
中国で最初に地下鉄を見た地下鉄、旅先で最初に乗った地下鉄は1990年代初めの北京でした。
シートが固く、青いプラスチック製のベンチが連なっていて、ひんやりしていたこと、地下も深くて、人も少なかったことを今でも覚えています。運賃が高くて、安いバスを使われていたからです。
紹興は数年前に行った時、駅前やその近辺で通行制限するくらいの大規模な工事をしていました。後に地下鉄だったと知りました。比較的直近なので驚きでした。
余談ですが、上記都市を入力したときに、ほとんど変換すれば出てきました。以前は中国の都市は一文字ずつ入力しなければ駄目だったのですが、変換エンジンの精度が上がってきているようですね。
街を人々の生活の姿を眺めるのが好きなので、バスや徒歩で移動しているので地下鉄はあまり使いませんが、使い方や見方はひとそれぞれです。
訪れたことがある都市は多数ありますが、何れも地下鉄ができる前が多く、次行った時は、街の変化に驚くことになるでしょう。
作者プロフィール
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1991年から30年間で70回以上の中国訪問歴を有するベテラン旅行ブロガー。
中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営。
新型コロナウイルス後の中国旅行に対応した最新情報から、大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。
【個人旅の実績】 訪問した省・市・自治区:32(残1) 訪問地:200以上
【印象に残る旅のエピソード】 数え切れず
【撮影した写真】 45,000点以上
安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。
1日100元以内での滞在に挑戦するなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、海外モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。
ブログをご覧になられた読者との交流も大切にしており、ほぼ毎日質問がきて、いただいた情報をブログや動画に反映している。メーリングリスト立ち上げなど、新しい取り組みも行っている。
詳細は作者紹介をご参照ください。問合せはこちらまで。
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