中国で困らない!短期旅行者向けの支払い方法と予備の決済手段ガイド
中国渡航経験者の誰もが一度は経験するのが「お金が使えない。」という支払いに関するトラブル。支払い方法の準備が旅の成否を分けます。スマホ決済が主流となった中国では、決済方法を複数用意しておかないと予想外の事態に困ることがあります。
「スマホ決済だけで十分?」「現金はいくら必要?」「トラブル時のバックアップは?」など、悩みは尽きません。
この記事では、中国旅行30年の経験から導き出した最適な決済手段や予備の決済手段準備について、最新の状況を踏まえて解説します。
なぜ中国で複数の決済手段が必要なのか
中国旅行に出かける際、多くの方が「WechatPay(微信支付)」や「AliPay(支付宝・アリペイ)」といったスマホ決済アプリだけで十分だと考えがちです。
確かに、中国ではキャッシュレス化が急速に進み、露店や小さな商店からデパートまで、ほぼすべての場所でQRコード決済が利用できます。
しかし、中国旅行30年の経験と最新の現地での観察結果から言えることは、スマホ決済だけに頼る旅行スタイルは大きなリスクを伴うということです。
そこで、中国旅行における支払いリスクとその対策、そして最適な決済手段の組み合わせについて、実体験に基づいた情報をお届けします。
中国での決済手段の種類と特徴
中国で利用可能な主な決済手段は次の種類です。それぞれの特徴を理解し、自分の旅行スタイルに合った組み合わせを考えましょう。
- スマホ決済
- 現金
- クレジットカード
- 銀聯カード(デビットカード)
- 海外対応キャッシュカード【日本で発行】
- 人民元銀行口座【中国で開設】
- 交通カード(電子マネー)
各決済手段の詳細解説
7つそれぞれの決済手段のメリット・デメリットを踏まえて、個別に独自評価をしました。(★★★★★が一番評価が高く、☆☆☆☆☆が一番評価が低いとしています。)
それぞれの決済手段について特徴など詳細は、で解説していますので併せてご覧ください。
① スマホ決済
- 利便性 ★★★★★(非常に高い)
- 適用範囲 ★★★★★(ほぼすべての店舗で利用可能)
- 準備の難易度 ★★★☆☆(クレカ登録が必要)
- リスク要因 データ通信環境、バッテリー残量、アプリのセキュリティ対策
中国のスマホ決済は日本よりも遥かに普及しており、露店から高級レストランまでほぼすべての場所で利用可能です。
インターネット接続が必須であり、スマホのバッテリー切れやアプリのセキュリティロックなどのリスクがあります。
② 現金(人民元)
- 利便性 ★★★★☆(両替が必要、かさばる)
- 適用範囲 ★★★★★(全ての場所で利用可能)
- 準備の難易度 ★★★☆☆(事前に両替が必要)
- リスク要因 紛失・盗難リスク、受け取り拒否、お釣りがないケース、高額決済時の不便さ
キャッシュレス化が進んでいる中国でも、現金はまだ広く受け入れられています。
一部の店舗では小額紙幣の受け取りを拒否されることがあります。最高額面は100元札(約2,000円)なので、高額決済時にはお札の枚数が増えてしまうのが難点です。
③ クレジットカード
- 利便性 ★★☆☆☆(店舗によって使えない)
- 適用範囲 ★★☆☆☆(主に高級ホテルやデパートなど)
- 準備の難易度 ★★★★★(日本で事前準備可能)
- リスク要因 加盟店の少なさ、通信障害
中国ではVISAやMaster、JCBなどの加盟店は限られていますが、ホテルや高級レストランなど外国人が多く利用する施設では使える場合が多いです。2024年春以降、外国人向け決済環境整備の政府方針により、利用可能店舗が増加傾向にあります。
④ 銀聯カード
- 利便性 ★★★★☆(クレジットカードより広く使える)
- 適用範囲 ★★★☆☆(コロナ禍で減少傾向)
- 準備の難易度 ★★★☆☆(日本で発行可能)
- リスク要因 端末の減少、セキュリティ対策の必要性
中国国内のデビットカードの標準となった銀聯カードは、日本の一部クレジットカード会社からも発行されています。コロナ禍以降、端末設置店舗は減少傾向にありますが、鉄道切符売場では使えるなど高額決済では重宝する部分があります。
⑤ 海外対応キャッシュカード
- 利便性 ★★☆☆☆(ATMを探す必要がある)
- 適用範囲 ★★★☆☆(都市部のATMで利用可能)
- 準備の難易度 ★★☆☆☆(海外対応口座が必要)
- リスク要因 ATM手数料、引き出し限度額、ATM故障
日本の銀行口座から中国のATMで現地通貨を引き出せるサービスを利用します。「Cirrus」や「PLUS」のロゴがあるキャッシュカードが対応しています。手数料はかかりますが、人民元が不足した緊急時に役立ちます。
⑥ 人民元銀行口座
- 利便性 ★★★★★(銀行やAYTMで出金可能)
- 適用範囲 ★★★★★(中国国内で制限なし)
- 準備の難易度 ★☆☆☆☆(開設難易度が非常に高い)
- リスク要因 開設手続時の意思疎通、帰国後の管理
中国の銀行口座があれば、現地の人と同じように使えますが、外国人の口座開設は難易度が非常に高く、中国語のコミニュケーション能力が必須ですし、都市部では英語でもOKですが、短期旅行者には現実的ではありません。ビジネス目的の長期滞在者や留学生向けのオプションと言えます。
⑦ 交通カード
- 利便性 ★★★☆☆(各都市により仕様が異なる)
- 適用範囲 ★★★☆☆(発行した都市による)
- 準備の難易度 ★★☆☆☆(手続可能な場所が限られる)
- リスク要因 開設手続時の意思疎通、帰国後の管理
交通機関でのメインの決済手段でしたが、スマホ決済が使えるようになり、必要性が低下してきました。中国全土で使える仕様の交通カードもありますが、そうかどうか事前確認が必要です。
支払できないリスクに備えた準備を!
便利になったキャッシュレス決済ですが、WechatPayやAliPayが急に使えなくなるリスクが結構あることやクレジットカードや銀聯決済に対応していないなど、ひとつの決済手段では対応できないリスクがあり、それぞれに対応する必要があります。
決済手段別リスク分析
次の表は、各決済手段のキーとなる項目を比較したものです。これを参考に、自分の旅行スタイルに合った決済手段の組み合わせを検討しましょう。
滞在先で使える支払手段を6種類として、次の5指標を比較する内容として挙げました。
- 中国での適用度
- 決済手数料の有無
- 高額決済の適否
- データ通信環境の要否
- 日本人にとっての難易度

スマホ決済以外の予備の決済手段が必要
スマートフォンはQRコードを使ったキャッシュレス決済ができる便利なツールですが、次の例のように様々なトラブルが起こることが想定され、中国での決済手段にはバックアップが必要な場面があります。
スマホ決済が急に使えなくなるケース例
- データ通信回線が不調で決済アプリが使えない
- バッテリー(電池)切れでスマホが使えない
- 盗難や紛失によりスマホが手元になくなる
- スマホの指紋認証や顔認証が急にできなくなった
- 原因不明でアプリで決済することができない
- 決済アプリでセキュリティロックされた
- 店舗側の理由でスマホ決済ができない
日本で生活している時のことを考えてもらうとより分かりやすいです。助けてくれる家族や友人への連絡手段が複数あったり、銀行のキャッシュカードを財布に入れてあったりするなど、バックアップ手段はかなり充実していますが、それら全てを中国へ持ち込むことは物理的にできません。
また、日本にいる時とは異なり、故障するリスクやソフト的に使えなくなるリスクなどが高くなり、それらに対していかに対応ができるかどうかがポイントとなります。
旅先、特に中国など海外では、使うことが可能な手段がどうしても限られてしまいますので、可能な限り、次に挙げるバックアップ手段を出発前に準備しておくことをお勧めします。
箇条書きにした上から順番に難易度が高い手段となります。
具体的なバックアップ方法
覚えておいてほしいのは、これら単体の支払い方法だけで考えますと、何れも万能ではないことです。予備の支払い手段として用意するのであれば、複数を考えるべきだと思います。
人民元
現金の肩身が狭くなってきているとはいえ、使用範囲が最も広いという大きなメリットは今でも健在です。
金種が最大100元札までしかないため、決済額が高いとお札の枚数が必要となり、盗難や紛失のリスクが生じます。

現金は、手持ちの現金はどうしても限られておりますし、預金を直接引き出せる訳ではありません。
また、日本円を両替する必要があるということも他の支払い手段とは異なる煩雑な点です。
日本円
中国元に交換できる外貨です。米ドルに交換するまでではありません。数日の滞在であれば、数万円を持っているだけでも安心です。

交換できる銀行や支店は限られ、米ドルよりは少ないですが、両替ができる店舗は都市部では多数ありますし、地方の県クラスの町でも1件は必ずあります。
クレジットカード
中国では2000年代前半でも使えたのですが、広く普及しませんでした。使用できる場所は銀聯カードよりも限定されますが、ホテルでの宿泊代金支払いなど、高額決済の時に持っていると便利な決済手段です。

2024年春以降、外国人向けの決済手段を充実させるように中央政府から通達が地方政府に出ておりますので、復調基調にあります。
銀聯カード
中国では銀行口座のキャッシュカードとして使われているので保有率は抜群に高いですが、コロナ禍を経て決済端末が大幅に減少中しました。

とはいえ、現地の銀行口座がなくても、日本のクレジットカード会社が発行している銀聯カードを用意すれば、スマホ決済に代わるキャッシュレス決済として活用可能です。
海外対応キャッシュカード
日本でつくった銀行で発行されたものの中で、中国など外国で出金できる海外対応の銀行のキャッシュカードがあるかどうかが鍵となります。

海外対応かどうかの見分け方ですが、キャッシュカードに「Cirrus」「PLUS」のロゴがあれば大丈夫です。中国でも中国も含めた海外のATMでキャッシングができます。
デビットカードではなく、手数料はそれなりにしますが、現地通貨での引き出しが可能となります。中国の人民元が必要となった時の救済手段のひとつとなります。
人民元銀行口座
取得難易度のハードルは正直、高いのですが、中国語会話、英会話、ボディ―ランゲージ、筆談の何れかができて、親切な窓口スタッフに当たるかどうか次第で、元口座が開設できるかどうかが決まると言って過言はありません。

2019年秋に企画体験旅行に行った際、体験プログラムの一環で、陝西省北部の県クラスの町の大手銀行支店で参加者複数名が希望した銀行口座開設をサポートしまして、問題なく開設できました。
中国滞在中の決済方法 ~実例集~
通信環境を確保できるのであれば、「キャッシュレス決済だけで旅行ができるようになりました。」と言いたいのですが、スマホ決済だけにすれば、電池切れや故障、盗難といったセキュリティリスクがあり、不安がどうしてもぬぐえません。
「本当にこれだけの種類必要なのか?」と思われるかもしれせん。バックアップを兼ねている手段も含まれています。このあたりは旅をする皆さんの考え方次第で変わるのではないでしょうか。
2024年9月コロナ禍後 3回目の渡航時
トラブルが生じないよう事前対策を行ったこともあって、スマホ決済で10日間を過ごすことができました。
スマホ決済以外は、予備手段として念のために持っていったものですが結局使いませんでした。「もう少し種類を少なくして絞ってもよかった。」というのが率直な感想でした。
2023年9月コロナ禍後 最初の渡航時
実際、2023年9月、中国現地ではどのような決済手段を用意したかといいますと、最も主力だったのは「スマホ決済」でした。
到着直後から最初の3日間は、問題が発覚してデータ通信が使えなかったことで全く使えず、「現金」と「電子マネー」(北京市の交通カード)のみで過ごしました。
結果ですが、データ通信環境が回復してからは、ほぼ100%決済がAliPayとWechatPayでした。この便利さに慣れますとやめられませんでしたが、セキュリティエラーが出てしまい、万全ではなかったという実績が教訓として得られました。
「デビットカード」は、三井住友銀聯カードのことですが、列車の切符といった数十元から100元を超える運賃の決済に使いましたが、頻度は高くありませんでした。
「クレジットカード」は全く使いませんでした。元々、使うつもりはなかったのですが、片道航空券を急きょ買わないといけないときのバックアップ的なものとして想定していました。
コロナ後の渡航から得た教訓
2023年~2024年にかけて3度中国へ行きました。キャッシュ決済中心の中で得た教訓があります。
データ通信環境の事前対策と、アプリの事前設定を入念に行うことで、スマホ決済だけでも旅行が可能です。ただし、バックアップとして他の決済手段を準備しておく安心感は非常に大きいと感じました。
おすすめの決済手段組み合わせパターン
渡航する人のタイプ別に、お勧めの組み合わせを紹介します。
経験上、二つ以上の決済手段を持っていくことが望ましいやり方の例です。
① 安全重視型
初めて中国へ行く方や久しぶりに中国へ渡航する方向けです。
- メイン 「現金(人民元)」
- サブ 「スマホ決済」
- 予備 「クレジットカード」
中国の決済環境に慣れていない方は、まず現金をメインに考え、徐々にスマホ決済に慣れていくのがベターです。
② 利便性重視型
スマホ決済の便利さを知ってしまった方に向いています。
- メイン 「スマホ決済」
- サブ 「現金(人民元)」
- 予備 「銀聯カード」
メインにスマホ決済を据え、モバイルバッテリーなどの対策をしっかり行い予備の手段を少なくします。
③ 高額決済対応型
ビジネス出張者向けのパターンです。高額決済が想定しつつ、急なトラブルにもとっさに対応できます。
- メイン 「スマホ決済」
- サブ 「クレジットカード」
- 予備 「現金」
ホテルやビジネスディナーなど高額決済が予想される方は、クレジットカードを重要なバックアップとしましょう。
④ 作者が実践しているパターン
現金を持たない、どうしても必要な時だけ引き出し(出金)できる手段を持つこと、現地での通用度に重点を置いたパターンです。
- メイン 「スマホ決済」
- サブ 「銀聯カード」、「クレジットカード」
- 予備 「人民元銀行口座」
30年の旅経験から得た現時点の結論です。現金以外の決済手段ではポイントを貯めることができる最強布陣です。予備は現金の代替手段として考えたものです。
出発前準備チェックリスト
実際に旅行や仕事で渡航する際の準備に便利なチェックリストを用意しました。
- スマホ決済のクレカ登録や設定は済んだか?
- 現金の準備をどうするか決めたか?
- クレジットカードや銀聯カードのチョイス
- モバイルバッテリーやケーブルの準備
- 通信手段の確保
まとめ ~安心して中国旅行を楽しむために~
中国旅行における決済手段の準備は、旅の成否を左右する重要な要素です。決済手段によっては使えなくなるリスクを考慮する必要があります。
ひとつの決済手段だけでは、リスクが大きいので、別の決済手段を備えることで、ある程度リスクが軽減され、安心できるレベルまで上げることできます。
- 複数の決済手段準備が鉄則
スマホ決済は便利ですが、様々なリスク要因があります。最低でも2種類、できれば3種類の決済手段を準備しましょう。 - 現金は依然として有効なバックアップ
キャッシュレス化が進む中国でも、現金は基本的にどこの場所で使用可能です。旅行初日や緊急時に備え、適切な額の人民元を用意しましょう。 - 旅行前の入念な準備が安心を生む
スマホ決済アプリの設定、クレジットカードの利用通知メール設定、現金の準備など、出発前にできる準備を怠らないことが重要です。 - リスク想定と対策が旅の質を高める
「もしも」の事態を想定し、出発前に対策を講じておくことで、旅行中のストレスを大幅に軽減できます。
中国旅行は、決済環境の変化が非常に早い国です。記事の情報を参考にしつつ、現地で使う決済手段を決めて、安心して中国旅行や現地滞在をお楽しみください。
決済手段に関して役に立つ情報
深掘りした内容の記事が多数ありますので、併せてご覧いただき参考にするとよいでしょう。