中国ビザ免除、なぜ日本人だけ取り残された?
2023年7月以降、中国は東南アジアやヨーロッパ各国に対して短期滞在ビザ免除措置を再開・拡大、2024年に入ってからも続々と一方的なビザ免除が進んでおります。
2023年7月以降、中国政府は多くの国々に対してビザ免除を実施していますが、日本に対しては未だ再開されていません。ここでは、この問題に焦点を当て、その背景や影響、今後の展望について深掘りします。
とうとう韓国がビザ免除!
2024年11月から中国政府は韓国人への短期ビザ免除を開始しました。一方的なもので、韓国側はなぜこの時期に措置を実施したのか首をかしげています。
韓国に動きがあったとなりますと、次は日本と期待できるのですが、そうは問屋は降ろさないのが中国です。まだ予断は許されません。
中国ビザ免除に関する日本の現状
中国への旅行やビジネスの際、ビザ取得は欠かせない手続きの一つです。過去、日本を含む一部の国々はビザ免除の恩恵を受けていましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、ビザ免除措置は一時停止されました。
日本人の中国渡航にはビザが必要であるため、ビジネスや旅行などの人的交流が大きく制限されているのが現状です。
第2次トランプ政権が誕生することで、中国への経済的圧力が強まってくることが予想され、中国も無傷ではいれないため、日本との経済関係を見直す姿勢に転換することで、活路を見出そうとするならば、中国政府の日本政府に対する置き土産としてビザ免除はアリだと考えます。
ビザ免除再開の遅れがもたらす影響
ビザ免除再開の遅れは、日中間の経済・文化交流に大きな影響を与えています。
- ビジネスの停滞
ビザ取得の難しさから、日本人の中国への出張が減少し、新規ビジネスの立ち上げや既存ビジネスの拡大が難しくなっており、経済活動に大きな支障が出てきています。 - 観光客の大幅減少
中国への日本人観光客数はコロナ禍前に比べて大幅に減少しています。団体ツアーも実施が困難で、近くて遠い国に逆戻りした感があります。 - 人材交流の制限
学生や研究者などの交流も実施的に制限され、日中間の相互理解が深まりにくくなっています。双方が相手国の印象が良くなる副次的な作用も生じています。
日本人へのビザ免除再開が進まない理由
中国政府の日本人に対するビザ免除再開が遅れている理由は、主に以下の3つが挙げられます。
- 複雑な政治関係
これまで日中関係においては、歴史認識や尖閣諸島、福島原発放射線処理水、台湾関係など、現在も複雑な問題を抱えており微妙な関係が長く続いています。ビザ免除を外交カードとして利用している可能性があります。こうったことが複合的にビザ免除が進まないことに影響を与えている可能性があります。 - 中国国内事情
中国政府は、新型コロナウイルス感染症対策や経済発展など、国内問題に注力しており、上層部は日本人に対するビザ免除について関心が薄く、対応が後回しになっている可能性があります。 - 相互主義の壁
日本政府が中国国民に対する訪日ビザの要件などの緩和措置を実施していないことを理由に、中国政府は日本人に対するビザ免除措置の再開に消極的な姿勢を示しています。ビザ施策においても対等な関係を求めているのです。 - 重視されない日本
GNPベースの経済規模は既に中国は日本を追い越し、他国へのビザ免除で観光客が増える中、ビジネスも含めて日本と深い関係がなくてもやっていけるという思惑が透けてみえます。
一方向のビザ免除ってどういうこと?
基本的にビザ発給に関しては、相互同等の措置が正常な関係だと考えを背景に、中国政府は中国人の短期訪日ビザの免除に向けて日本政府へ働きかけていますが、日本政府はそれに応じていない模様です。相互がビザ免除するという話は進んでいないようです。
一方で、中国政府は各国に短期渡航のビザ免除を行い、観光客を中心に渡航者が増えていることが大々的にアピールされています。経済的に苦しい中国の事情からすると、中国へのインバウンド客増加はありがたい経済効果でしょう。
中国政府の各国に対するビザ免除措置
中国政府は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で停止していたビザ免除措置を2023年7月以降、東南アジアやヨーロッパのの国々に対して次のとおり段階的に再開・拡大しています。
ビザ免除対象国一覧(2024年11月現在)
- 2023年7月26日
シンガポール、ブルネイ - 2023年12月1日
フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシア - 2024年3月14日
スイス、アイルランド、ハンガリー、オーストリア、ベルギー、ルクセンブルク - 2024年7月1日
オーストラリア、ニュージーランド、ポーランド - 2024年10月15日
ポルトガル、ギリシャ、スロベニア、キプロス - 2024年11月8日
ノルウェー、フィンランド、デンマーク、アイスランド、スロバキア、アンドラ、モナコ、リヒテンシュタイン、韓国
これら30ヶ国に対して、ビジネス、観光、親族・友人訪問、トランジットなどの目的で中国へ渡航する場合、滞在期間15日以内の短期滞在であれば、ビザなしで中国に入国できますが、多くの国は期限が2025年末までと設定されています。
日本には、相互主義を求める一方、中国は欧州諸国に対しては一方的にビザ免除措置を実施しています。これは、中国が欧州諸国との関係強化を優先しているためなのですが、ある意味、時と場合に応じた柔軟な対応と言えます。
このことから、中国は相手の国によって外交政策を柔軟に使い分けていることを示しており、日本に対しては強硬な姿勢を維持していると言えるでしょう。
経済界の中国政府への働きかけ
日本の経済界からはビザ免除再開の要望が幾度も持ち上がっています。
2023年6月には日系経済団体が中国政府にビザ免除再開を求める要望書を提出しました。また、2024年1月には、経団連などの経済団体訪中団が李強首相と会談し、ビザ免除措置の早期再開を要望しました。
李強首相からは相互主義に基づく対応を求める回答がありました。これは中国が外交政策において一貫して重視している原則です。
変化の兆し
日本政府は、中国政府からの要求に対して慎重な姿勢を崩していません。その理由は、中国人のビザ不正取得や不法滞在に繋がることなどが懸念されているためです。
一方で、中国政府は日本に対して強硬な姿勢から少し柔らかくなりつつあります。2024年1月の外交部記者会見で、報道官は「日本の各界によるビザ免除再開を求める訴えに対しては、真剣に検討を加えている」と、日本人の短期滞在ビザ免除措置について前向きな姿勢を表明しました。
ビザ免除再開の見通しは?
中国政府は、日本人のビザ免除再開について「真剣に検討している」と表明していますが、具体的な時期は明らかになっていません。肩透かしのまま現状が続く可能性があります。
いつという具体的な時期を予測するのは大変困難です。今後の日中関係の進展や、中国政府の政策変更などによって状況が変化する可能性があります。
査証免除するなら日本側も同様にという主張が中国政府によりされており、中国側の面子もあるなかで、妥結点を見出すならば、他国と同様に「試行」で「一方的」という形であれば、実施しやすいのではないでしょうか。
ただ、継続してきたゼロコロナ政策を突然廃止するといった実績があるように、中国は柔軟に対応できる国なので、サプライズ的にビザ免除が再開されるという展開もあり得ます。今後の中国の動きに注目です。
中国ビザ免除再開への期待
中国はトップダウンの国ですので、ゼロコロナ施策を急に取り止めた実例があるように、突発的に復活することがあり得ますので、良い意味での予断を許しません。
過去の歴史を振り返りますと、ニクソンの訪中や日中国交正常化への動きなど、中国は大胆な外交政策を展開することがあります。したがって、ビザ免除の再開に向けた進展も予測不可能なタイミングで、突然訪れる可能性があります。
もし、ビザ免除措置が再開されれば、日本人の中国渡航が活発化し、ビジネスや観光、文化交流などの分野で大きなメリットが期待されます。また、日中関係の改善にもつながります。
日本人の中国ビザ免除問題の展望
中国と日本の間には多くの課題が存在します。政治的、経済的な背景や、国際情勢の変化など、複雑な要因が絡み合っており、ビザ免除再開が遅れている背景となっています。
日本人に対する中国ビザ免除の再開は依然として不透明な状況にありますが、将来的には、ダイナミックな国、中国のポジティブな変化が期待できます。
総理といったトップレベルでの働きかけがそろそろ必要な時期に来ています。何らかの妥結点を見つけて、少しでも早く、大きな動きが出ることを期待したいものです。首脳外交が急きょ進展すれば、突然復活することは十分考えられます。
また、日本と中国が相互理解を深めて、経済活動を活発化させるためにも、双方にとって有益な解決策を見出すことが、ビザ免除問題の解決に向けた鍵となるではないでしょうか。
私は中国旅行を30年以上続けておりまして、現在まで中国に関心を持ち続けています。これまでの中国の様々な動き、中国人の生活をずっと見てきましたし、今も見続けています。旅行に役立つ情報にとどまらず、このような関連トピックについても語っていきたいと思います。
作者プロフィール
-
1991年から30年間で70回以上の中国訪問歴を有するベテラン旅行ブロガー。
中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営。
新型コロナウイルス後の中国旅行に対応した最新情報から、大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。
【個人旅の実績】 訪問した省・市・自治区:32(残1) 訪問地:200以上
【印象に残る旅のエピソード】 数え切れず
【撮影した写真】 45,000点以上
安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。
1日100元以内での滞在に挑戦するなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、海外モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。
ブログをご覧になられた読者との交流も大切にしており、ほぼ毎日質問がきて、いただいた情報をブログや動画に反映している。メーリングリスト立ち上げなど、新しい取り組みも行っている。
詳細は作者紹介をご参照ください。問合せはこちらまで。
最近の新規投稿
- 2024-11-13計画中国旅行に現金はいくら必要?~旅費を安くする秘けつ~
- 2024-07-28移動【基礎知識】中国滞在中の移動手段比較ガイド
- 2024-07-27計画【中国ビザ申請】お困りの方必見!トラブル対策マニュアル
- 2024-07-21計画格安航空券の隠れ費用:燃油サーチャージと賢い航空券を選ぶコツ