【解説】中国ノービザの道遠し、いつ復活する?

中国へ行くにはビザを取得しなければならない状況が続く中、なぜコロナ禍前のように15日以内ノービザが復活しないのかその背景について解説します。

2019年以前は中国短期渡航は査証免除だった

新型コロナ感染症が流行する前は、日本国籍のパスポート所持者は15日間のビザなし渡航が認められていました。これは2003年から認められた措置で、長く続いた結果、観光やビジネス目的の日本から中国への渡航者増加に大きく寄与していました。

5ヶ国に対する短期査証免除措置を試行

最新情報ですが、2023年11月24日、中国外交部からの発表によれば、相互互恵ではない、片方向による短期渡航ビザ免除施策を同年12月1日から2024年11月30日までの1年間実施することになりました。

報道による記事では「试行扩大单方面免签国家范围,对法国、德国、意大利、荷兰、西班牙、马来西亚6个国家持普通护照人员试行单方面免签政策。」とあります。

6ヶ国に対して短期渡航に対する査証免除について(中国日報網(新華網))

対象国は、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアで6ヶ国中5ヶ国はヨーロッパ、1ヶ国はアジアです。

業務や観光、親族・友人訪問などの目的で15日以内の訪中に対して査証免除となります。この内容自体は、コロナ前に日本人に対して適用された免除と同じ内奥のものです。異なるのは1年間試行するということだけです。

「单方面」は一方的なニュアンスがありますが、これを日本には適用していないというのが今回の動きの注目点ではないかと考えます。

日本と中国の関係は、この11月に首脳会談が行われるなど、対話を続けていくことが確認されたものの、前途はまだ楽観視できる訳ではありません。

様々な懸念が見られる昨今の政治状況ですと、シンガポールやブルネイと同様に短期査証免除が復活する形はハードルが高いと思います。

査証免除するなら日本側もという主張が中国政府によりされており、中国側の面子もあるなかで、妥結点を見出すならば、6ヶ国と同様に「試行」という形であれば、実施しやすいのではないでしょうか。

余談は許されませんが、中国人の団体旅行も最初はアジアやヨーロッパなどが旅行先として解禁され、後で日本も加わっている変化を踏まえれば、同様に、後で日本も適用される可能性がありますので、期待しすぎずに待ちましょう。

日本人の中国へ渡航者数

2004年から2012年までは330~390万人中国を訪問しておりました。2016年から2019年まで年間およそ260万~270万人に減りましたが、ノービザが大きく貢献していることは言うまでもありません。

2023年10月に日本人が海外へ出国した人の数は93.7万人、8月は120万人で2019年8月の210万人に比べ6割近くに回復しています。

観光目的の外国人入国者数激減

中国メディアからによる視点で見てみましょう。「暴跌97%!为什么老外不愿意来中国旅游了?真的只是因为疫情吗?」(2023年9月5日  网易号) 

97%も激減!なぜ外国人が中国へ来なくなったのか?コロナ禍が原因であるが故ではないのでは?といった趣旨のタイトルですが、記事には、2023年上半期に、中国へ入国した1,000万人のうち50万人しか西側諸国から来ていないということが触れられていました。

ビジネス客を除いた純粋な外国人観光客の人数はごくわずかで、残酷な数字であり、断崖のような激減であって、北京や上海など世界でも知名度の高い観光都市は98%減というありさまであることです。

中国政府のコロナ政策による影響もあり、渡航しづらいというイメージが外国人に根付いてしまい、中国で観光する意欲が減退しているということが大きということが言えるのではないでしょうか。

それ以外にも国際線の路線や便数の回復途上で、まだまだコロナ前の状況に戻っておらず、航空券も高値で推移していることも、中国への足が遠のく原因です。

中国へ渡航するのにはビザが必要!

現時点では、プライベートでの観光や仕事で中国へ行く目的でもビザ(査証)の取得が必要で、申請者本人が申請時とパスポート受取時の計2回、申請センターへ行かなければならず、かなりの負担となります。

地方在住の方にとっては、多大な負担になることについて、「地方から悲痛の声、中国旅行へのハードル高し」をご参照ください。

2023年8月11日から12月31日までの措置となりますが、L(観光)、M(商業・貿易)などの種類については、両指10本の生体認証データ採取を免除されました。とはいうものの求められる場合があります。

緩和されましたが、ビザの手配を行っている旅行代理店が少ないことから地方在住者にとって大変な状況は変わりません。

4年ぶりの中国旅行を計画中ですが、決めたのが7月20日頃で、2ヶ月後に旅をするのは結構きびしく、ぎりぎりのスケジュールでビザ取得手続を進めまして、無事取得することでき、9月に10日間の中国旅行が実現しました。

観光目的でもビザ取得が必要なの?

観光については、他の渡航目的と同様に、個人団体問わず、観光ビザの取得を中国政府が求めています。

これが日本人の中国への渡航意欲減退に繋がり、観光や業務による中国への訪問者が増えない理由となっております。

前項でも触れましたが、ビザ申請センターや総領事館まで2度も行かなければ観光ビザが取得できない。そこまでして中国へ行くかどうかと言えば、多くの方はNoと言うのではないでしょうか。

団体ツアーについては、個人単位でのビザ取得が必要となり、旅行会社が対応しきれておらず、催行できる環境は整っていないのが現状です。

そういった中で、多くの方々が日本から中国へ旅行に行かれる日を願って、ハードルが少しでも低くできるように、情報発信をしているところです。

注目すべき様々な動き

2023年3月からようやく観光目的での渡航が可能となりましたが、この半年間でポイントとなる動きが結構ありまして、これらを列挙するだけでも結構な数になりますが、具体的に解説いたします。

福島原発放射線処理水放出

福島原発の放射線処理水の放出を2023年8月24日に始めました。これに対して、中国政府は即座に反応し、日本からの海産物の輸入を停止しました。対象範囲が福島県や周辺県のみならず全都道府県を対象としていることがみそです。

農林水産大臣が「ここまで予想していなかった。」旨のコメントを記者会見で行っていますが、甘い見立てだと言わざるを得ません。

「ビザ免除と関係ない話なのではなないか?」と思われるかもしれませんが、残念ながら、中国はそのようには考えておりません。この反応を見る限り、ビザ免除への道は逆に遠くなったと考えることが妥当線だと思います。

他国のビザ免除措置再開

日本と同様に双方ではなく一方的な15日間の査証免除を実施していたシンガポールとブルネイに対して、中国政府はコロナ前と同様の取り扱い、ビザなし渡航を認める措置を2023年7月26日から再開しました。

シンガポールは相互免除措置の導入に向けて交渉入りするという話があり、その進展状況を見てかどうかまでは不明ですが、日本と差をつけてきたことは事実です。

日本への団体旅行解禁

一方的な措置ですが、2023年8月10日から中国から日本への団体旅行が解禁されました。他国は23年の早い時期に解禁されたのと比べるとあえて遅くしていると考えるのが妥当です。

相手もただで復活させるのではなく、中国人の訪日ビザ免除を目指していると思われますので、事情はそう簡単ではありませんが、一つ進展したと言えます。

中国政府による日本政府へのビザ免除の要求

基本的にビザに関しては相互同等の措置が正常な関係だと考えを背景に、中国政府は相互免除に向けて日本政府へ働きかけていますが、日本政府はそれに応じていない模様で、話は進んでいないように見受けられます。

東京のビザ申請センター拡充

中国政府は日本に3ヶ所ある「中国ビザ申請サービスセンター」のうち、東京にあるセンターを拡充のため移転することを検討中であることがテレビ朝日の独自取材により判明しました。

具体的には、ビザ取得時間を半分まで短縮するために、東京の中国ビザ申請センターのスタッフの増員やオフィスの拡張や移転を考えており、このような動きは中国政府からの指示により進められているとのことです。

これは、日本人を含めた外国人に対してビザ取得を今後も求めていくという前提で、センターの拡充を進めていることを意味しています。

経済界から中国政府への働きかけ

日本政府や民間経済界からは中国政府に対して、ノービザ渡航を実現するよう、各ルートから様々な働きかけを行っていますが、成果は出ておりません。

ビザ免除がいつ復活するか?

様々な関連する動きを見て言えることとしては、今のところは、ビザ取得が必要な現状が維持されることを中国政府が意図しているのではないかということです。

特に、福島原発の件は、短期渡航の査証免除復活が逆にノービザへの道が遠のいたということを暗に示唆するものであります。

いつ復活するかは日中関係の進展によります。不透明な状況が続くだけで、しばらくは復活することはないのではないかと予想しています。

しかし、ゼロコロナ政策の突然の放棄といった中国の動きを見る限り、トップ同士の会談といった首脳外交が急きょ進展すれば、突然復活することは十分考えられます。

ビザ取得に役立つリンク

仕事を目的とした業務渡航や親族訪問など、中国ビザ申請に関して網羅的に解説した【解説】中国渡航に必要なビザ申請方法(2023)がありますので、興味ある方はご覧ください。

代理店を通じて申請されたい方向けに、中国ビザ申請を代行業者に依頼する際の注意事項があります。

ご自身で申請される際の具体的な申請方法については次のページで紹介しています。

観光ビザの取得方法を知りたい方へ

中国への観光目的の旅行は2023年3月15日にビザ取得が可能となりました。Lビザ(観光目的の査証)を取得すれば中国へ旅行ができます。

中国旅行に行きたい人向けに「【必見】中国旅行に必要な「観光ビザ」取得方法を解説」で詳細を記しましたので参考にしてください。

名古屋で申請した結果を「名古屋中国ビザセンターで申請した詳細を解説」で詳細レポートしました。

観光以外のビザの種類の申請とも共通又は類似している部分がありますので、参考になれば幸いです。

ビザなし短期渡航実現に向けて

日本がインバウンドを本気で進めるのであれば、中国人の訪日客数は欠かせません。

トップレベルでの働きかけがそろそろ必要な時期に来ています。何らかの妥結点を見つけて、少しでも早く、大きな動きが出ることを期待したいものです。

中国はトップダウンの国ですので、ゼロコロナ施策を急に取り止めた実例があるように、突発的に復活することがあり得ますので、良い意味での予断を許しません。

日中両国の協議により決まるか、中国政府からの発表により実施されるかは問いませんが、コロナ前のような短期渡航はビザなしを実現いただきたいものです。

作者プロフィール

旅人@中国旅行一筋30年
旅人@中国旅行一筋30年ブログサイト「中国旅行ドットコム」運営者
1991年から30年間で70回以上の中国訪問歴を有するベテラン旅行ブロガー。

中国旅行に興味がある方や個人旅行を計画している方、中国のリアルな姿を知りたい方向けのブログサイト「中国旅行ドットコム」を運営。

新型コロナウイルス後の中国旅行に対応した最新情報から、大都会の路地裏から田舎の町や村まで足を運ぶ、ツアーでは決して体験できない独自の旅行スタイルを持つ。

【個人旅の実績】 訪問した省・市・自治区:32(残1) 訪問地:200以上
【印象に残る旅のエピソード】 数え切れず
【撮影した写真】 45,000点以上

安宿に泊まり、長距離バスや夜行列車などのローカルな移動手段を使って、現地の人々と触れ合い、肌に感じる旅をして、リアルな中国渡航情報を発信中。

1日100元以内での滞在に挑戦するなど、旅の費用を抑える工夫が得意。独自の旅のノウハウを有し、海外モバイル経験も長く、ANA陸マイラーでもある。

ブログをご覧になられた読者との交流も大切にしており、ほぼ毎日質問がきて、いただいた情報をブログや動画に反映している。メーリングリスト立ち上げなど、新しい取り組みも行っている。

詳細は作者紹介をご参照ください。問合せはこちらまで。

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